「人生の質」上げるワーケーションのススメ 「どこでもオフィス」実践の4つのポイントとは

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ワーケーションによる離職率ダウン効果は?

   ワーケーションにはさまざまなタイプがある。

   まずは、子どもを連れて参加する「ファミリーワーケーション」。五島列島のワーケーションでは、地域の保育園の一時利用、小学校の体験入学、アウトドアスクール、見守りサービスなどを準備。平日の昼間は、子どもは子ども、大人は大人で別々に過ごし、夜や週末は親子一緒に旅先を満喫する。そんな工夫もしているそうだ。

   企業からのニーズが高いのが、「合宿・研修型ワーケーション」だ。人気があるのは和歌山県の白浜町だ。東京から飛行機で南紀白浜空港まで約70分というアクセスのよさから、IT企業の誘致が進み、現在11社が進出。それらの企業が、ワーケーションというかたちで、合宿や研修も兼ねて社員を送り込んでいる。

   ほかにも、あるメガバンクは3か月に一度、社内のプロジェクトチームや全国の支店の若手などが2泊3日する社内プログラムを実施しているそうだ。2日間はグループ討論、3日目は地元の農家でのボランティア作業をする。銀行の社会的役割を感じる機会にもなっている。

   最近では、行政と企業がタッグを組んだ「事業創造型ワーケーション」も出てきた。「公共交通が維持できず、お年寄りが買い物難民になっている」「漂着する大量の海ゴミを拾う人手が確保できない」など、地域特有の課題に対して、技術や知見を持つ企業がコミットするというものだ。しかし、地域の課題解決は複雑なので、まず、「地域を知る→好きになる」プロセスを大事にしてほしい、と書いている。

   2020年度、テレワーク可能な社員2000人のうち4分の1の約530人がワーケーションをしたJAL(日本航空)では、20代の離職率ダウンに効果があったそうだ。ユニリーバ・ジャパン、パソナ・グループの取り組みのほか、ワーケーションをきっかけに移住した人、起業した人も紹介している。

   『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』などの著書がある著作家の山口周さんは、「人生で一番大切な決定事項は『場所』」だとして、「生きたい人生を生きよう」と序文を寄せている。山口さん自身、東京から神奈川県の葉山町に引っ越して、確実にいい人生を送っているという。

   評者も10年ほど前から年に数回、自宅以外の場所で1~2週間リモートワークをしているが、それも一種のワーケーションかもしれない。Wi-Fiさえつながれば、どこでも仕事ができる時代に感謝している。本書を読み、五島列島にも行ってみたくなった。

(渡辺淳悦)

「どこでもオフィスの時代」
一般社団法人見つめる旅著
日本経済新聞出版本部
1980円(税込)

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