緑茶飲料国内最大手の伊藤園が、ウクライナ危機の影響で全体の株価が下がる中で健闘している。
2022年3月2日には一時、前日終値比200円(3.0%)高の6800円まで値上がりした。この日の日経平均株価は一時前日終値比2.0%安(終値は1.7%安)まで下げる逆風下で、有力な「ディフェンシブ銘柄」(景気動向に左右されにくい生活必需品などを扱う企業)として物色された。その後も日経平均株価は下げ基調ながら、伊藤園の株価は踏みとどまっている。
「お~いお茶」のラインアップ強化が奏功
3月2日の買い材料となったのは、1日の取引終了後に発表した2021年5月~22年1月期連結決算の内容が良かったことだ。売上高は3036億円。今期から売上高の数値に大きな影響が出る会計基準の変更をしたため、伊藤園は売上高の増減率を発表していないが、旧基準ベースでは3.3%増となる。
主力の「日本茶・健康茶」の販売数量が1億736万ケースと前年同期比3%増えたことを反映した。2021年11月にテアニンと茶カテキンの働きにより「認知機能(注意力・判断力)の精度を高める」とする機能性表示食品「お~いお茶 濃お抹茶」を発売。12月には会議など向けに小容量(195ミリリットル)の「お~いお茶 緑茶」を投入するなどラインアップを強化したことも功を奏した。
営業利益は35.2%増の141億円、最終利益は79.7%増の103億円だった。広告宣伝費の効率化、物流費の抑制といったコスト削減策が効いたほか、コーヒーチェーンのタリーズコーヒージャパンの営業損益が8億円の黒字(前年同期は11億円の赤字)に転じたことも寄与した。コロナ禍が直撃した前期に比べれば客足が戻り、コーヒー豆の販売も回復した。
売り上げの7%占めるタリーズが黒字転換へ
ここでタリーズについて確認しておこう。もともと米シアトル発でスターバックスと並ぶコーヒーチェーン。日本では実業家の松田公太氏が1997年に創業し、2006年に伊藤園傘下となった。2022年1月末現在の店舗数は762。米国の本家は2012年に経営破たんしたが、日本ではライセンス権を買い取っていたのでその影響もなく事業を継続している。
伊藤園の売上高全体に占めるタリーズの割合は今期7%程度で、お茶などの飲料全般の「リーフ・ドリンク関連事業」の売上高の8%程度。客足が途絶えた前期は通期で13億円の営業赤字だった。2021年10月中間連結決算の時点で営業黒字は1億円余りだったが、今回の決算発表によって2期ぶりの通期黒字が確実な情勢となった。主力飲料の伸びに加え、この黒字転換も投資家に安心感を与えたようだ。
とはいえ、ロシアのウクライナ侵攻以前からコーヒー豆など原材料費が高値圏にあり、今後の収益に影響しかねない。国内で勝負するディフェンシブ銘柄としては有力かもしれないが、業績の推移には注意する必要もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)