「この会社、辞めたいなあ~」とお悩みのアナタ。
新しい仕事を探すときに気になるのは、転職活動は働きながら続けたほうがいいのか、それとも退職してから始めたほうがいいのか、である。それぞれにメリット、デメリットがあるのだから。
転職支援サービスの「ビズヒッツ」(三重県鈴鹿市)は、「働きながら転職活動をするメリット・デメリット 男女500人アンケート」と「仕事を辞めてから転職活動をするメリット・デメリット 男女500人アンケート」という、まさに疑問に答える2つの調査結果を2022年2月に発表した。どちらが「お得」か、参考にしてはどうだろうか。
働きながらの転職活動は「お金と気持ち安定」
両調査とも、実際の体験者それぞれ500人に聞いたアンケートをもとにしているので、実感がこもっている。まず、「働きながら転職活動をするメリット・デメリット」をみると、「収入がある安心感」というメリットがある一方、「現職との両立が大変」というデメリットがあることがわかる。
具体的なメリットのダントツの1位は「収入が途切れない」だった=図表1参照。2位「精神的なゆとりがある」、4位「転職に失敗しても安心」、5位「じっくり転職活動できる」といった回答も、収入が安定している安心感から生まれたと推測できる。こんな体験談が聞かれた。
「収入が途絶えないので、生活苦に陥らなくてすむ」(転職時35歳・女性)
「収入を確保したままで転職先を探せる」(同43歳・男性)
金銭的な不安のない状態だと気持ちに余裕ができるし、家族に心配や負担をかけることもない。じっくり冷静に転職活動に取り組めることが、働きながら転職する最大のメリットだ。
2位の「精神的なゆとりがある」でもこんな意見が寄せられている。
「身の振り方が決まってから辞めるほうが現実的です。安心感が違います」(33歳・女性)
「仮に転職先が見つからなくても現職にとどまれることから、安心して転職活動できる」という人が多く、「あとがない」状態ではないため、不採用通知を受けたときのダメージも少し和らぐ、というわけだ。
また、同率で2位だったのが「ブランクができない」だった。こんな意見に代表される。
「退職後すぐに新しい会社で働ける」(26歳・女性)
「キャリアに穴が開かない」(33歳・女性)
職務経歴に空白ができないし、失業中に生活リズムが崩れてしまう心配もない。また、「離職期間がないと、年金や保険の手続きもラクになる」という声もあった。
働きながらのデメリットは「就活に集中する時間ない」
一方、「働きながら転職活動をするデメリットは何か?」と聞くと、「時間が限られる」と「日程調整が難しい」が、僅差で1位、2位となった=図表2参照。いずれも現職を続けるメリットの裏返しとして、転職活動に時間がとれないことがネックになる。それぞれこんな意見が代表的だ。
「転職活動の時間が限られるため、求人を探すのに苦労した」(27歳・女性)
「とにかく時間がない。平日でも応募企業の選定、履歴書の作成などを行わなければならない」(30歳・男性)
「『どんな仕事に就きたいか』など、先のことを考える余裕が持ちにくい」(38歳・女性)
「平日は仕事があるので、面接日などを決める際に困った」(23歳・女性)
「急な面接に行けないことがあった」(42歳・男性)
業務時間外で転職活動を行うため、割ける時間はどうしても少なくなる。そのため泣く泣く面接を辞退したり、「企業研究や自己分析が不十分なまま面接に臨んでしまった」と反省したりする人も。
3位にランクインしたのは「職場に気を使う」だった。
「転職活動が周囲に知られると会社での居心地が悪くなる。気づかれないように活動しないといけない」(30歳・女性)
「面接時は仕事を休まねばならず、職場の人たちにバレルのではないかと不安になる」(33歳・男性)
「周りには言えない後ろめたさを感じる」(43歳・女性)
職場にバレるのでは...という不安は、「転職活動がうまくいかなかったら現職にとどまろう」と考えている場合、とくにプレッシャーになるようだ。
退職すると腰を据えて転職活動に取り組める
一方、「退職してから転職活動をするメリット・デメリット」をみると(=図表3参照)、メリットでダントツの1位は「十分な時間がとれる」だ。これは、「働きながら転職活動をするデメリット」の1位、2位の「時間が限られる」「日程調整が難しい」の裏返しだろう。
また、2位「スケジュール調整しやすい」、3位「リフレッシュ・リセットできる」、4位「自分を見つめ直せる」なども時間に余裕ができたためといえる。全体的に「時間にゆとりがある」メリットは大きい。こんな声が代表的だ。
「ゆっくりと時間をかけて会社の下調べができるなど、片手間にならずに集中できる」(29歳・女性)
「どこの会社がよいか、考える時間が十分にある」(49歳・女性)
「時間の融通がきくので、先方の日程に合わせやすい」(32歳・女性)
腰を据えて転職活動に取り組めるのは、大きなメリットなのだ。
また、3位の「リフレッシュ・リセットできる」は、精神面でも大きな効果があることを表している。
「辞めた直後は、社会から離れられた解放感を感じられる」(25歳・女性)
「平日の帰省や旅行など、これまでできなかったことができて、リフレッシュできる」(42歳・男性)
退職する際、残っていた有給を消化するなど、長期的な休みをとる人が多く、気持ちを新たに就職活動に専念できることも大きい。
収入源の焦りから「妥協」してしまうのが残念...
では、仕事を辞めてから転職活動をするデメリットは?
ダントツの1位は「収入が減る・なくなる」だった。これも「働きながら転職活動をするメリット」の1位の「収入が途切れない」の裏返しだ。2位「焦り・不安が大きい」、3位「妥協してしまう」はいずれも、収入への不安からきているのだろう=図表4参照。こうした不安の代表的な意見をみると――。
「貯金が十分ある人以外は、生活費に対する不安は拭えない。失業保険が出るとはいえ、厳しい生活を強いられた」(29歳・女性)
「辞めて数週間経った頃から、急に焦る気持ちになる。『とにかく早く次の仕事を見つけなければ』と冷静さを失う(25歳・女性)
「『すぐに決まらなかったらどうしよう』という不安が日に日に大きくなる(転職時29歳 女性)
退職してから転職活動する場合には、十分な貯金を用意しておくことが大切だ。失業給付額は前職の賃金より少なく、「自己都合退職」だと3か月間は給付を受けられない。最低限、失業給付が受け取れるまでの3か月分の生活費は必要となる。
こうした金銭面の不安から「妥協してしまう」が3位にランクインした。
「焦りが出て、若干条件などを妥協してしまう」(38歳・女性)
「無収入の状態が続くと『なんでもいいから早く就職したい』と考えてしまう」(45歳・男性)
結局、転職活動が長引く焦りや不安から、正社員希望だったのに非正規雇用で入社したり、希望の職種を断念したりする人も少なくない。
「初心忘(わす)るべからず」という。転職を決めたからには、働きながら活動するほうがいいのか、それとも退職してから始めたほうがいいのか――。どっちが自分に合っているかをじっくり考えておこう。
調査は、「仕事を辞めてから転職活動をするメリット・デメリット」では、2021年12月16日~24日に仕事を辞めてから転職活動をした500人(女性307人・男性193人)に、「働きながら転職活動をするメリット・デメリット」では、2021年12月11日~30日に働きながら転職活動をした500人(男性263人・女性237人)に、それぞれインターネットで行った。
(福田和郎)