北京冬季オリンピックの終了とともに、ロシアはウクライナ東部の親ロ派の独立を承認。直後にウクライナへ侵攻を開始しました。
これにより、株式市場をはじめとする金融市場は衝撃を受け、暴落に見舞われることとなりました。500万円程度で推移していたビットコインも急落し、一時400万円を割り込む場面もありました。しかし2月末に急騰し、下げ幅を帳消しにする展開となりました。
いったい何があったのでしょうか?
ウクライナ情勢不安と仮想通貨の驚くべき関係を解説します。
ウクライナ侵攻直前にロシアは仮想通貨を承認する方針に
▼ビットコインの価格推移
2022年2月4日、ロシアのアントン・シルアノフ財務大臣は、それまで認めていなかった仮想通貨を、禁止するのではなく規制する方向性であるという財務省の考えを首相への書簡で伝えました。これまで、仮想通貨はマイニングしか認めないという方針でしたが、急に方向転換したことに市場は好感。ほぼすべての仮想通貨が上昇する展開となりました。
なお、ロシアでの仮想通貨の扱いは日本や欧米のようにデジタル金融資産ではなく、通貨に類似したモノとして分類されるようです。
そもそもロシア人がどれくらい仮想通貨を保有しているのかというコトが疑問ですが、ブルームバーグによると、2021年末時点で約23兆円規模にのぼる可能性があると報じています。
参考リンク:ブルームバーグ(2022年2月1日付)
一方でロシアの財務大臣によれば約3兆円、ある議員の調査によると約7兆5000億円という数値のバラつきもあります。しかし、2月末の時点で220兆円の時価総額がある仮想通貨の1%から最大10%超もの金額を保有しているロシアの動向は無視できないでしょう。
ロシアルーブルの急落で仮想通貨を買う動きも
なぜ、ロシアが突然仮想通貨を認めたのか不思議でしたが、この時には既にウクライナへ侵攻することを決めており、ロシアルーブルの急落や国政決済システムであるSWIFTからの排除を見越した対応だったのかもしれません。
なお、2月14日にはウクライナも仮想通貨を認めることを決めています。
ウクライナでは、かなりの人が仮想通貨の取引を行っているそうです。ブルームバーグによると、1日あたりの仮想通貨のトランザクションの数が、同国の法廷通貨、フリヴナの数を上回っているそうです。
欧米諸国は、ロシアの一部の銀行を国際決済システムであるSWFT(スイフト)からの排除を発表しました。これを受け、ロシアルーブルの価値は30%ほど急落しました。ロシアを代表する株式指数であるRTS指数は、一夜にして50%の大暴落に見舞われました。
▼ロシアルーブルの価格推移
ルーブルや株の価値が下がると、ロシア国民は自身の資産を守ろうとします。たとえば、金やダイヤモンドをはじめとした価値を保存できる資産を買う動きが起こることが考えられるでしょう。
ビットコインの役割として、決済と送金の他に「価値の保存」があります。ビットコインが、ロシアルーブルからの避難先となっているのでは、と考えた投資家の思惑買いから相場が上昇していると見ることもできるでしょう。
実際に、テレビではロシア各地でATMに行列ができ、ルーブルを引き出そうと試みている人がいる様子が伝えられています。
ある国や地域で有事や金融危機が起き、ATMに行列ができる時に仮想通貨が上昇するという事象は、過去にも起きました。2013年のキプロス危機や、2018年に発生したトルコリラ暴落などが代表的です。
特に今回は、SWIFTからの排除が行われているため、個人や企業は仮想通貨を使った国際送金での利用することも考えられます。
仮想通貨事情に詳しいウォレット開発会社のCOOを務めるサニー・ワン(Sonny Wang)氏は、ロシア国民が相対取引市場でドルの価格に連動する仮想通貨USDTを買っている動きがあるとツイートしています。
相対取引であるため、実際にどれくらいの規模の取引が行われているか、わかりません。しかし、実際にそういった動きがあるのであれば、短期間で一斉にロシアルーブルから仮想通貨へ資金が流れる可能性があるため、価格を押し上げる要因となります。
今後、ロシア通貨のルーブルが下落した際には、再び仮想通貨が上昇するかもしれません。また、ウクライナ情勢不安により、原油をはじめとして鉄鉱石などの資源や小麦やトウモロコシなど、あらゆる商品価格が高騰しています。
ただでさえインフレが進んでいる世界に、これらが拍車をかけることは火を見るよりも明らかでしょう。
これらの事情が、コロナショック以降に「インフレヘッジ」として認められてきたビットコインに、ますますお金が集まる状況になっているといえそうです。
(ひろぴー)
参考リンク:ロシア、ウクライナ侵攻と仮想通貨