原油と小麦の急騰が止まらない。
米ブリンケン国務長官がロシア産原油の輸入禁止措置を欧州同盟国と検討していると発言したことを受け、原油の「北海ブレンド」先物価格が2022年3月7日、一時1バレル=139.39ドルをつけた。
小麦の先物価格も同日シカゴ商品取引所で1ブッシェル当たり12.94ドルと過去最高値に達した。
日本株の下落も止まらない。3月8日、東京証券取引所の日経平均株価は前日終値より430円46銭安の2万4790円95銭と、ついに2万5000円を割り込んだ。
日本経済はどうなるのか? エコノミストたちの見る目は厳しい。
ガソリン価格が220円台に上昇すると、お手上げ
このまま原油価格が上がり続ければ「レギュラーガソリンが1リットル200円台に突入するかもしれない」と警鐘を鳴らすのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏のリポート「対ロシア制裁による原油価格一段高と国内原油高対策の限界」(3月7日付)のなかで、実際にロシア産原油の禁輸が決まれば、WTI(西テキサス中質原油)先物価格も130ドルを超える可能性が高い、と指摘した。
「原油価格の高騰は日本経済にも一段と打撃となる。WTI原油先物価格130ドルで計算すると、年初からの原油価格上昇は75%程度に達し、これは、日本の実質GDP(国内総生産)を1年間の累積効果で0.26%押し下げる計算となる」
木内氏は海外での原油価格と為替レートの2つの要素から、1か月後の国内でのガソリン小売価格をかなり正確に予想することができるという。それによると、3~4月のレギュラーガソリン価格(東京、以下同)はこうなりそうだ。
「3月のレギュラーガソリン価格の平均値は175円(補助金の影響を含まない)となる計算だ。現在の補助金制度のもとでは、引き続き実際の小売価格は170円程度の水準を維持できることになる」「ところが、3月のWTI原油先物価格の平均が130ドルまで上昇する場合、4月のレギュラーガソリン価格は202円(補助金の影響を含まない)まで上昇する」
これは、最大25円の補助金制度のもとでも、レギュラーガソリン価格が177円まで上昇する計算になる。仮に、WTI原油先物価格が史上最高値の152ドルまで上昇する場合は、レギュラーガソリン価格は221円まで上昇する。こうなるともうお手上げだ。木内氏は、
「最大25円分の補助金制度に加えて、現在政府内で検討されているガソリン税のトリガー条項の凍結解除によるガソリン価格引き下げ効果の25.1円を合わせても、ガソリン小売価格の上昇は抑えられなくなる」「ウクライナ情勢を受けた海外での原油価格の持続的な上昇を受けて、国内での原油高対策が追い付かない状況となってきた」
と警告するのだった。