落ちる株価、慌てる投資家! 「地政学リスク」にどう対応すればよいのか?(小田切尚登)

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地政学リスクは思っているほど株価に影響しない

   それ以外の、たとえば今回のウクライナ問題と類似点のありそうなケースである1956年のハンガリー動乱の場合は1%も下がっていない。また、米ソ核戦争一歩手前までいった1962年のキューバ・ミサイル危機の場合でも、それほど大きく下落していない。

   これからいえるのは、地政学的な出来事は我々が想像するほどには株式市場に大きな影響は与えてこなかったということだ。

   これは地政学以外の事象の影響と比べてみると、よりはっきりと見えてくる。2000年のドットコムバブルの崩壊では米国の株価は25%近く、2008年の金融危機で50%弱も下がった。1929年の世界恐慌で、ダウ平均株価は何と約9割も下がった。それらに比べると地政学的な影響はたいしたことがないように思える。

   結局、戦争やテロは人々に強い心理的影響を与えるが、経済活動に対する影響はそれに比べると小さい、ということだろう。もちろんロシアやウクライナのような当事者にとってはそれどころではないわけだが、少なくとも海外で客観的に状況を見据えることが可能な立場にいるのであれば、ある程度我慢をしていれば遠くない将来に光が見えてくる場合が多い。少なくともこれまではそうであった。

   もちろん、今回のケースがそのような軽傷ですむかどうかは予断を許さない。ロシアとウクライナの戦いは長引きそうであり、投資家にとっても気が気でない。今後、場合によってはNATOが本格的に参戦して、第三次世界大戦になっていくというシナリオもあり得ない話ではない。

   ともあれ、我々は目の前の事象に追い立てられるのではなく、歴史を教訓にして中長期的視点を持って進んでいくべきだ。今のような時期こそ、パニックにならずに客観的な視点を維持することが大事である。今回はその発想法の一つの例を提示してみた次第である。

(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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