「働き盛りの年収が、なんと25年前より100万円以上も減っている!」
こんな衝撃的なデータが、2022年3月3日に開かれた政府の経済財政諮問会議の席上に提出された。データをまとめたのは政府の本丸・内閣府だ。しかも一目瞭然のグラフで示された。
民間シンクタンクなどが「年収の下落」を示すことは多いが、「アベノミクス」以来、経済政策はいちおう成功しているとしてきた政府中枢が公表するのは珍しい。いったい、どういうことか。
「我が国の所得・就業構造について」を深読み
報道によると、政府は3月3日、首相官邸で経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)を開いた。今夏の参議院選挙前にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に「人への投資」の強化策を盛り込むためだ。
そのための議論のたたき台の資料として、内閣府は1994年から2019年までの所得構造の変化を分析したデータを提出した。この25年間で、働き盛りの実質的な世帯収入が約100万円~200万円近く減っているという衝撃的な内容だ。
会議で岸田首相は「25年間で働き盛りの世帯の所得が100万円以上減少している」と指摘。「ライフステージに応じたきめ細かな人への投資に取り組む」と強調した。そして、野田聖子・少子化担当相に「女性活躍・子育て支援、ソーシャルセクターの育成や企業との連携分野で、包括的な施策を取りまとめる」よう指示したのだった。
さて、その衝撃的な「年収の下落」データとはどんな内容か。内閣府が経済財政諮問会議に提出した「我が国の所得・就業構造について」(参考資料)を読んでいこう。
これは、総務省「全国家計構造調査」「全国消費実態」の個票を内閣府が独自に集計し、2019年の世帯所得を25年前の1994年の比較、分析したものだ。所得税負担や社会保障費など、いわゆる「所得再分配」が施される前の生データを元にしている。