約4割の企業、1年後に公開価格下回るデータも
ただ、経済学者のケインズが投資家の行動パターンを「美人投票」にたとえたように、株に絶対的な価格はない。実態はどうなのだろうか。
内閣官房によると、公開価格から初値の値上がり幅は平均48.8%と、米国や英国の16%前後より大きく、上場後に株価が跳ね上がる傾向があるという。
一方、最近はIPOが相次いだことによる需給悪化などで、必ずしも政府の指摘が当てはまらない状況もある。ブルームバーグの調べでは、2021年12月~22年2月24日に上場した38社のうち、初値が公開価格を割ったものが14社あった。また、野村証券の資料によると、2005~19年に上場した企業の株価を分析したところ、1年後に約4割が公開価格を下回っていたという。
いずれにせよ、政府が成長戦略の中で取り上げているように、新興企業を応援し、世界で通用する企業を育てるという日本経済の大きな課題に直結するテーマだ。
短期間の株価の変動にとらわれすぎず、機関投資家が企業の技術力などを見極める「目利き」の力を備えることや、金融機関や大企業を中心にファンドを活用して新興企業を育てることなどを含め、多面的な取り組みの一環として、公開価格の問題も考える必要がありそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)