ロシア軍によるウクライナ侵攻から1週間が過ぎ、戦火が拡大するなか、ビジネスへの影響も深刻化してきた。欧米諸国や日本などによるロシアへの経済制裁の動きが強まったことで、現地に進出する日本企業は工場の操業や販売の停止を余儀なくされている。
すでに、軍事侵攻による液化天然ガス(LNG)や石油のエネルギー資源や小麦などの価格上昇の影響が広がっている。また日本も含む、約200の国と地域の金融機関1万1000社超が参加し、世界各国の資金決済を担うSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアを締め出した(米ドル建てでの送金や決済が困難になった)。サイバー攻撃も増えているという。
一方、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の要請などもあって、ウクライナやその周辺地域への人道的支援の輪が広がりつつある。
主な日本企業の対応を見てみた。
ZOZO、ファミマ、ソニーと続々
●ファーストリテイリング
ウクライナとその周辺地域で、緊急人道支援に対して1000万米ドル(約11億5000万円)を寄付することを決めた。寄付金は、避難所の設置や救援物資の配布、子どもたちの心のケアなど、人々の命と安全を守るための緊急性の高い支援に充てられる。
併せて、ユニクロのヒートテック毛布、ヒートテックインナー、エアリズムマスクなどの衣料品計10万点とリサイクル衣料の防寒着など10万点を、ポーランドなどに避難してきた難民に提供する予定。2022年3月4日の発表。
●ZOZO
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」で、ウクライナの人々を支援するためのチャリティーTシャツを予約販売する(販売期間は3月14日まで)。価格は2020円(別途送料210円)で、売り上げの全額を寄付する。
●ファミリーマート
店頭の募金箱へ寄付金額とファミリーマートの企業募金額を合わせた「ファミリーマート 夢の掛け橋募金」の一部を、募金の寄託先である認定 NPO 法人国連 WFP協会と公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを通じて、ウクライナとその周辺国での人道支援活動に活用する。
●ソニーグループ
ウクライナとその周辺地域の人道的支援のため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際NGOのセーブ・ザ・チルドレンへ、合計200万米ドル(約2億3000万円)を寄付する。また、世界各地のソニーグループ各社で社員募金を実施。集まった募金に対して同額のマッチングを行なう。
工場の操業停止相次ぐ
●自動車
トヨタ自動車は、2月24日をもってウクライナトヨタのすべての事業活動を停止。ロシアトヨタは「部品の調達ができなくなっているため、生産の継続が難しくなっている」として、3月4日から当面のあいだ、サンクトペテルブルク工場での稼働と完成車の輸入を停止する。
ホンダは、物流や金融の混乱のため、クルマやオートバイなどのロシア向け輸出を一時停止。
●エネルギー
ロシアのLNGプロジェクト「サハリン2」から、英国石油大手のシェルが撤退する。シェルの出資は27.5%。日本からは、三井物産が12.5%、三菱商事が10%をそれぞれ出資している。サハリン2は2009年から出荷を開始しており、年間生産量は約1000万トン。その約6割が日本向けに出荷されている。
●日本たばこ産業(JT)
ロシアとウクライナの双方に工場がある。ウクライナ国内の従業員数は約900人いるが、工場の操業を24日から停止中。
●住友電気工業
従業員の安全を確保するため、ウクライナ西部にある自動車用ワイヤーハーネス(組み電線)の工場を2月25日から停止中。
●日立製作所
ウクライナ国内に、米グローバルロジックのエンジニアリング拠点が5か所。約7200人の現地スタッフが在籍している。
●クレジットカード
クレジットカード大手のVISAとマスターカードは、それぞれ決済ネットワークからロシアの複数の金融機関を排除したと発表した。
●航空
日本航空やANAホールディングス傘下の全日本空輸は、ロシアのモスクワ便を欠航している。