新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大がなかなか止まらない。政府は、新型コロナウイルス対応の「まん延防止等重点措置」の期限が3月6日までとなっている31都道府県のうち、北海道や東京、大阪など計18都道府県の期限を延長することになった。
多くの職場で感染者が出ている今、本書「【図解】新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」から、あらためて注意すべきポイントをおさらいしてみたい。
「【図解】新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」(亀田高志著)エクスナレッジ
著者の亀田高志さんは医師で、労働衛生コンサルタント。企業や自治体、専門家に向けた講演、研修などを手がけている。著書に「課題ごとに解決!健康経営マニュアル」などがある。
重大な死傷事故の裏に...「バードの法則」とは?
労働安全管理の分野には、職場での労災事故を減らす「バードの法則」という考え方があるという。
重大な死傷事故の裏には、軽症の事故が10回あり、その前に物損事故が30回あり、背景に600回ものヒヤリとした、ハッとしたという危ない状況があるという法則だ。対策は重大災害に注目するのではなく、ヒヤリハットや物損を少なくすることに力を入れるという考え方だ。
これを感染症にあてはめると、病原体との接触を減らすために、不要不急の外出を控え、感染経路を遮断するように手を洗い、自身の体調を整えることで、最後の重大災害にあたる発病の機会を減らすことができる。ようは、リスクの可能性をできるだけ少なくするよう意識するということだ。
すでに多くの企業で、対策マニュアルをつくり、実行しているだろう。それなのに、事業遂行に支障が出ている職場もあるようだ。あらためて、Q&A形式でわかりやすくまとめられている本書から参考になるアドバイスを抜粋しよう。
Q「オフィス内で発熱を訴える従業員が出たら、どうすればよいですか?」
A「本人のケアを行い、産業医等と連携し、帰宅措置などを家族と共に行い、同僚へのケア、主管部門とも情報共有します」
本人の周りや触ったものにウイルスが付着している可能性がある。そのため、使用した机、いす、ドアノブ、電話、トイレの便座等を消毒する必要がある。
新型コロナと診断された場合は、翌日から2週間をめどに自宅待機として、毎日2回、体温を測定し、咳等の症状を確認させ、発熱、咳等の症状が出たら、発病した際の手順を進める。
発熱した人を責めることなく、同僚たちとのチームワークが乱れないように、コミュニケーションを欠かさないようにする。その後、感染が確定し入院した場合は同僚に自宅待機措置を行う。
無事に回復した従業員が復帰する場合、慣らし運転的に業務量は少なめからスタートして、健康状態に合わせて増やしていくようにしよう。
Q「自宅待機の要請が出たときのために、何をしておけばよいでしょうか?」
A「2週間程度、外出をしなくてもいいよう、水、食料、日用品、常備薬等を準備しておきましょう」
多くの従業員が新型コロナに感染し、欠勤する可能性もある。事業継続計画に該当する事象なので、専門家にも加わってもらい、準備状況を確認することを勧めている。
部・課単位の業務継続計画に基づき、個人が休んだときの影響、個人の休みの積み上げ、職場外の原因による支障など、各部・課全体の見直しをする。社外のアセスメントと計画も検討する。顧客、サプライヤー、物流等についてだ。
事業継続計画の策定にあたっては、単なる表の作成におわらず、決定の手順と周知を重視するよう求めている。