「ドル箱」ミャンマー市場、中国市場から撤退のキリンHD 国内ビール飲料市場は成熟...活路はどこにあるのか?

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高付加価値ビールの海外展開、健康関連事業への期待

   キリンHDの海外事業は失敗続きといえる状況だ。

   2011年にブラジルでシェア2位のビール会社を3000億円で買収したが、業績は振るわず、17年に1000億円でハイネケン(オランダ)に売却。豪州でのチーズ事業と飲料事業も19~21年に売却するなど、軒並み不振で、相次いで撤退を強いられた。例外だったミャンマーも政治的理由で撤退するのは、キリンHDとしては、いかにも手痛い事態だ。

   では、どこに活路を見出そうとしているのか。国内のビールや飲料市場は成熟しており、成長は見込めないので、はやり注目は海外戦略になる。

   キリンHDが力を入れようとしているのが、高付加価値のクラフトビールだ。

   小規模な醸造所がつくる、多様で個性的なビールで、価格は高く、利益率も高い。世界のビール市場でも、有望分野とされる。

   そこでキリンHDは、21年末に豪ファーメンタム・グループ、22年1月に米ベルズ・ブルワリーを、それぞれ約400億円で買収した。今後について磯崎功典社長は「クラフトビールは有望であり、積極的に(買収などを)検討する」と述べている。

   もう1つ、キリンが力を入れるのが健康関連事業だ。

   中期経営計画(2022~24年)によると、健康関連で600億円の設備投資を行うと盛り込んでいる。子会社の協和キリンなどが担う同事業の売上高を20年の900億円から24年に2000億円に引き上げ、事業利益率を15%にするとの高い目標を掲げる(20年は10億円の赤字)。

   具体的には、細菌の感染への抵抗力を高めるとされる独自開発の機能性素材「プラズマ乳酸菌」、世界で初めて大量生産に成功した「ヒトミルクオリゴ糖」(母乳に含まれ、免疫や脳機能などに寄与するとされる)などに力を入れる。このほか、医薬品原薬(有効成分)の海外展開を加速する考えだ。

   2021年12月期のビール4社の決算は、サントリーHDとアサヒグループホールディング(GHD)が増収・最終増益、サッポロHDが増収・黒字転換の一方、キリンHDは減収、ミャンマー事業の減損損失計上で大幅減益になった。

   ライバルのアサヒGHDは、豪州や欧州の巨額買収で高級ビールのブランドを得て、収益にも貢献し始めている。キリンHDがクラフトビールと健康関連事業でどこまで巻き返せるか。早期に結果を出すことが求められている。(ジャーナリスト 済田経夫)

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