新東名高速道路(新東名)の神奈川県・伊勢原大山インターチェンジ(IC)から新秦野ICまでの区間(約13キロ)が2022年4月16日に開通する。
今回の区間の開通で、新東名は神奈川県海老名市の海老名南ジャンクション(JCT)から愛知県豊田市の豊田東JCTを結ぶ全区間約253キロのうち、約9割に当たる約228キロが完成することになる。中日本高速道路(NEXCO中日本)が2022年2月24日に発表した。
東名と比べて走りやすさを実感
新東名の残る工事区間は、神奈川県秦野市の新秦野ICから静岡県御殿場市の新御殿場IC間の約26キロメートルのみ。この区間は2023年度に開通する予定だったが、NEXCO中日本は21年12月、トンネル工事が難航し「2023年度の開通は困難な状況であり、工程精査が必要」と発表している。
新東名の全線開通が実現すれば首都圏と静岡・愛知両県方面の移動は、格段にスムーズになるだろう。全線の最高速度が時速120キロとなるのも夢ではない。
新東名を走ったことがあるドライバーなら、東名と走りやすさの違いを実感するだろう。道路は6車線で広く、カーブが少なく直線が多い。このため最高速度120キロの区間でも違和感なく、安心して走ることができる。これは新東名の設計の狙いどおりなのだ。
新東名はこれまで、海老名南JCTから神奈川県伊勢原市の伊勢原大山IC間の約8キロのほか、新御殿場IC~豊田東JCT間の約207キロと、新東名と東名を結ぶ連絡路(いずれも静岡県内の清水連絡路、引佐連絡路)が開通している。
新東名は東京と名古屋を結ぶ東名高速道路を補完する高速道路として、1995年に着工した。このうち、静岡県内の御殿場JCT~浜松いなさJCT間が2012年に開通。同区間は2020年に6車線となり、最高速度がそれまでの時速100キロから120キロとなった。
日本国内の高速道路で最高速度120キロの区間としては、新東名の御殿場JCT~浜松いなさJCT間が最も長く、静岡県内のほぼすべての新東名を最高時速120キロで走行できるようになった。
最高速度120キロ引き上げでも事故は増えていない
東名が静岡県内の駿河湾沿いを走るのに対し、新東名は静岡県内の内陸部を走っているのが特徴だ。これは東海地震など大規模災害が予想される静岡県内で、津波などの被害を回避する狙いがある。
東名は神奈川と静岡県境付近の山間部は箱根の外輪山を縫う形で、多数のカーブが続く。最もきついカーブは最小曲線半径300メートル(R=300)で、クルマ好きには面白い区間だが、初心者のドライバーには緊張を強いる。このためこの区間の制限速度は通常の時速100キロから80キロに抑えられている。
これに対して、新東名は「東名に比べてカーブと勾配が緩やかなのが特徴」(NEXCO中日本)という。
新東名の設計速度は時速120キロだが、1990年に新東名について議論した政府の道路審議会基本政策部会は「諸外国の設計速度、規制速度、アウトバーンの走行実態等からみて、今後さらに走行性、安全性等に関する調査研究の集積等の条件が整えば、乗用車については時速140キロ程度が実現可能であることから、これらの速度での安全性についても十分配慮しておく必要がある」と指摘した。
このため新東名は「時速140キロを担保する構造」とされている。日本の高速道路ではこれまで時速100キロが上限だったが、新東名で120キロが実現したのは、構造上は140キロまでの余裕があるからだろう。
東名に比べ、緩やかなカーブと勾配に加え、車線や路肩の幅員を広く設定した効果は大きい。
事実、新東名は最高速度を120キロに引き上げても事故は増えていない。NEXCO中日本によると、新東名の事故率は東名などNEXCO中日本管内の高速道路の平均値と比較して事故件数で約36%、死傷事故件数で約45%少ないという。(ジャーナリスト 済田経夫)