ウクライナ問題で「欧米」と「中ロ」分断
熊野氏は近い将来、米国を中心とした「ドル覇権」にロシアと中国がデジタル通貨で対抗する可能性を示唆したが、すでに現在、「表面的に中立を装っている中国が、ロシア支援に動く可能性がある」と指摘するのは第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏だ。
西濵氏のリポート「『SWIFT排除』で一気に状況が怪しさを増すロシア~ロシア経済を取り巻く状況は厳しさを増す一方、世界経済はデカップリングの様相を強める可能性も~」(2月28日付)のなかで、事態悪化前の2月初めに行われた中ロ首脳会談に注目した。
両国は、ロシア産小麦の中国への輸入拡大や、原油と天然ガスの供給拡大に加え、両国間の貿易決済に自国通貨(人民元とルーブル)を拡大することで合意した。西濵氏のリポートによると、これらの履行は事実上ロシアを支援するかっこうとなる、というのだ。
中国がロシアを支援するメリットは何か。西濵氏はこう指摘する。
「中国は2018年に上海先物取引所で人民元建ての原油先物取引を開始しているほか、(中略)人民元による国際原油取引を拡大させる取り組みを進めてきた」「ロシアのSWIFT排除によりロシアと中国の間の原油取引が拡大すれば、原油取引に占める人民元の存在感が高まる『副作用』が生まれる可能性がある」「また、中国では中国人民銀行が2015年に人民元建ての国際銀行間決済システム(CIPS)を導入しており、中国や欧米の大手金融機関のほか、日本の金融機関の現地法人が接続している」
ロシアがSWIFTの代わりに、CIPSを「抜け穴」として活用することが想定されるという。そして、西濵氏はこう結ぶのだった。
「ここ数年、世界では中国の『一帯一路』政策を追い風に、中国経済に依存を強める国が広がりをみせているが、ウクライナ問題は『欧米』と『中ロ』の分断(デカップリング)のきっかけになるとともに、各国は今後『踏み絵』を迫られる流れが広がる可能性もある」
(福田和郎)