世界を敵に回しても「ウクライナ侵攻」を止めないロシアのプーチン大統領。欧米や日本の経済制裁が始まるが、日本経済も返り血を浴びるのは避けらない。
いったい、日本企業はどのくらいダメージを受けるのだろうか。帝国データバンクが2022年2月28日、企業への影響を調べた「6割超の企業が活動にマイナスを見込む!~エネルギー価格の高騰による影響が最大の不安材料~」を発表した。
それによると、直接現地と取引関係にないところも含めて、6割超の企業がマイナスの影響をうけると懸念していることがわかった。
「プラスになる」と答えた会社の見方は?
ロシアのウクライナ侵攻を受け、米欧はロシア大手銀行を国際的な資金決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)から排除することで合意、岸田文雄首相も日本も加わると発表した。こうした強力な制裁がロシア経済に大きな打撃を与えるとみられる。
しかし、ロシアは原油・天然ガスや小麦などの資源大国だ。ロシア進出企業や現地企業と取引をしている日本企業に直接的な打撃を及ぼすだけでなく、資源価格の高騰が間接的に幅広い日本企業に大きな影響を与えていることが調査でわかった。
ウクライナ情勢で自社の企業活動に「マイナスの影響があるか」と聞くと、「ある」と「ややある」を合わせて61.0%の企業が、企業活動にマイナスになると心配していることがわかった=図表参照。
一方、ごく少数だが「プラスの影響がある」(「ややある」を含めて)と答えた企業が0.3%あったことが気になる。どういうことか。具体的な回答コメントをみたところ、
「インフレを誘発するが、『モノ』という現物に置き替えようとする働きを促すことになり、経済活動が活発になる。半面その悪影響を受けるため大きな変革が求められるが、トータルではプラスに働くでしょう」(広告関連・広島)
とあり、これはインフレになると、不動産や金を購入する動きが活発化するということなのだろか。
あらゆる資材の価格が高騰、モノが売れなくなる?
それはともかく、今後の事業活動に関して悲観的な見方が大半だ。とくに原油・天然ガスなどエネルギーや小麦の高騰によるマイナス影響を指摘する声が目立った。
「燃料価格の高騰、小麦価格の高騰など、社会全般にマイナス影響はある」(医薬品・日用雑貨品小売・北海道)
「原油高騰・液化天然ガス輸入抑制・株価下落など経済的にはマイナス傾向が続く。木材価格・資材価格などが高止まり予想で、収益を低下させる」(建設・北海道)
「物価上昇に伴う原材料費の上昇に加え、海外輸出が減少する恐れがある。経済制裁の発動にともない、アルミ製品などロシア産品の入手が困難になる」(機械製造・大阪)
「原油価格の高騰により、建設資材も高騰してコストが上昇していくことが予想される。不動産の高騰を招き、需要が減る可能性がある」(人材派遣・紹介・神奈川)
「原油高や空運・海運にも影響が出るので、国内での広告代理業ではあるが、広告主の動きが鈍くなる」(広告関連・東京)
「燃料費、材料費の高騰や調達の不透明への不安。設備投資などの遅れ」(鉄鋼・非鉄・鉱業・鹿児島)
「あらゆる資材の価格高騰、サプライチェーンの見直しが必要になり原材料価格の高騰は否めない」(機械・器具卸売・山口)
中国や北朝鮮の動向にも警戒
ロシアは半導体の主原料として知られるパラジウムの世界最大の生産国であり、世界の生産量の約40%を占めることから、世界的な半導体不足に拍車をかけることを心配する声も多い。
「世界的な半導体不足の影響が、軍事用品に比重が傾き、より不足状況が続く事となる。また株や為替も不安定となり、経済的に不況となる恐れがある(不動産・広島)
「半導体関連の材料の供給に問題が生じるのではと懸念する。また中国の動きによっては経済活動自体が制限される恐れもあるのではと考える」(鉄鋼・非鉄・鉱業・埼玉)
「レアアース、レアメタルなどの取引規制により、半導体などに供給不足が見込まれ、商品流通に支障が生じると思われる」(運輸・倉庫、大阪府)
また、株価の大幅下落を懸念する声も少なくない。
「金融不安がすすめば新興国の外貨不足につながり、債権回収に支障をきたすおそれがある」(飲食料品卸売・千葉)
「株価の下落に伴い、顧客企業の業績にマイナスとなる。受注減を心配。物価高がさらに続くと思われる」(輸送用機械・器具製造・長野)
さらに、中国・台湾・北朝鮮問題に波及して東アジアでの有事を懸念する意見さえみられた。
「オイル高、穀物高騰、海上貿易の停滞、株価低迷、最悪の可能性は中国と台湾の戦争開始」(飲食料品卸売・東京)
「石油製品、燃料関係の高騰。情勢不安による株価の下落と物流停滞。中国や北朝鮮の不穏当な活動活発化」(運輸・倉庫・長野)
「エネルギー問題が中国・台湾問題などに波及しそうで、日本経済に与える影響も大きくなるのではないかが不安だ」(広告関連・東京)
そしてなによりも、今回の事態が日本国民に与える心理的なダメージを憂える声があがっている。
「エネルギー源の値上がり、株の値下がり、および未来への不安」(飲食料品・飼料製造・福島)
「心理的に新型コロナ禍の次に戦争だと消費に結びつかない」(専門商品小売・兵庫)
調査は2022年2月25日~28日、全国の企業をインターネットでアンケートを行った。有効回答企業数は1437社。うち大企業は190社(13.2%)、中小企業・小規模経営は1247社(86.8%)だった。
(福田和郎)