ロシアに放たれた「金融の核兵器」...SWIFTからの排除 この最終手段でプーチンを止められるか【ウクライナ侵攻】

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   ウクライナに侵攻したロシアに対する制裁措置として、米欧は2022年2月26日、世界の主要銀行が参加する国際金融ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの大手銀を締め出すことを決めた。岸田文雄首相も制裁を支持すると表明した。

   SWIFTからの排除は、その影響力の大きさから、「金融の核兵器」(フランスのルメール経済・財務相)とまで言われる。経済制裁の最終手段ともいえるカードを切ったことで、果たしてロシアを止めることはできるのか。

  • プーチン大統領は今後どう出るのか?(ロシア大統領府公式サイトより)
    プーチン大統領は今後どう出るのか?(ロシア大統領府公式サイトより)
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ロシア経済大混乱...大手企業の「ロシア逃避」も加速

   SWIFTはベルギーに本部を持ち、世界200か国・地域を超える金融機関1万社以上が参加している。金融機関の国際決済を安全に自動処理してくれる事実上、唯一の機関となっており、グローバルにビジネスを展開するには欠かせない存在だ。

   ロシアは世界最大の天然ガス、小麦の輸出国で、そこから得られる利益が経済の柱となっている。SWIFTから締め出されても、FAXなど昔ながらの手法を使えば海外企業とのやり取りは可能ではある。だが、かなりの手間がかかるうえ、そもそもSWIFTを使えないような国と取引を継続しようとする企業は、そう多くないだろう。

   事実、2012年と18年に核開発をめぐる問題からSWIFTから排除されたイランは主力の原油輸出が大きな制約を受け、経済がマイナス成長に落ち込んだ。

   ロシア経済もすでに大混乱に陥っている。

   ロシアの通貨ルーブルは25日時点で1ドル=80ルーブル台で取引されていたが、発表後は1ドル=110ルーブル台にまで大暴落。ルーブル安とそれに伴う物価急騰件を受け、ロシア中央銀行は28日、主要政策金利を従来の9.5%から一気に20%にまで引き上げた。

   ロシア市民は現金を確保しようと金融機関に殺到しており、各地で取り付け騒ぎさながらにATMの長蛇の列ができているほどだ。

   また、英石油大手BPがロシアの国営石油会社ロスネフチ株(20%弱)を売却してロシア事業から撤退する方針を示すなど大手企業の「ロシア逃避」も加速している。

ロシアの対外輸出が滞れば、国際経済も返り血

   ウクライナ侵攻を虎視眈々と狙ってきたプーチン政権は、SWIFTからの排除を避けるためさまざまな手を打ってきたはずだった。

   欧州にまで天然ガスのパイプラインを伸ばし、ロシアに対する欧州のエネルギー依存を高める一方で、独自の国際決済システム「SPFS」の運用を開始。中国が運用する人民元による決済システム「CIPS」とも連携を深め、SWIFT排除の打撃を最小限にとどめる方法を模索してきた。

   ロシアのウクライナ侵攻当初は、天然ガス輸出の半分をロシアに依存するドイツなどが自国経済への影響を恐れてSWIFT排除に慎重な姿勢を示すなど、事態はロシアの思惑通りに進むかに見せた。

   しかし、ウクライナの被害が伝わり国際的なロシア批判の高まると、ドイツなどは態度を一転。SWIFT排除に踏み切った。

   頼みのSPFSも現在は大半がロシア国内の利用にとどまっているとみられ、SWIFTの代替機関となるには力不足だ。

   ロシア経済への打撃はもはや不可避という状況だが、原油を含めエネルギー大国でもあるロシアの対外輸出が滞れば、原油のさらなる高騰などのかたちで国際経済も返り血を浴びることになる。

   SWIFTという最終手段は、ウクライナを救うことにながるのか。その成否はロシア、世界経済のどちらがその悪影響に耐えられるかにかかっているといえそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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