「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言がある。
日本証券業協会の「相場格言集」には、
「株式投資といえば、何をおいてもまず出てくるのが、この言葉である。投資家は、とかく群集心理で動きがちだ。いわゆる付和雷同だ。が、それでは大きな成功は得られない。むしろ他人とは反対のことをやったほうが、うまくいく場合が多い」
と説いている。
1980年代に「赤信号、みんなで渡れば怖くない」なんていう流行語があったが、確かに大勢に順応すれば危険は少ない。というか、安全なような気になる。事なかれ主義で、何事によらず逆らわないのが世渡り上手だとすれば、この格言、多分にアマノジャク精神に満ちている。
人と同じことをやっていては大儲けできない!
株式相場は、上げばかりでもなければ、下げばかり続くこともない。どこかで転機を迎える。
相場格言集の「人の行く裏に道あり花の山」にある「投資家は、とかく群集心理で動きがちだ」という説明に倣えば、株式相場が「上げばかり」「下げばかり」のように動いていると思うときは、「大勢(多くの投資家)があまりにも一方へ偏り過ぎた時」なのだろう。そんなときは、「この格言を思い出すことだ」と解説している。
株式投資を長くやっていると、保有している銘柄の中に、「人の行く裏に道あり花の山」の投資格言にマッチする銘柄が出てくるもので、三越伊勢丹ホールディングス(HD)株がそれだ。
三越伊勢丹HDの株価は2015年6月の高値2400円から大きく下落。5年後の2020年7月31日には、21年3月期決算が600億円の赤字見込みであったことから479円の安値まで値下がりした。
そこで、ナンピン買い(保有する銘柄の株価が下がったときに、さらに買い増して平均購入単価を下げること)の機会到来と考えた。
最初は2019年5月9日に990円で100株を取得。その後、20年11月17日に610円で100株取得。 同年11月27日に580円で100株を取得。2022年2月24日現在、平均取得単価 745円80銭で300株を保有している。
「人の行く裏に花の山に行く道」はあった......
「底」を探りながら、売りが進む三越伊勢丹HD株を、ナンピン買いでコツコツと拾っていった。その過程は、まさに「人の行く裏に花の山に行く道」である。
自分自身には、買い材料はあった。ネット通販などの台頭や地方経済の低迷、インバウンド需要の消滅にコロナ禍による営業制限や外出自粛などの要因で長期低迷する百貨店業界にあって、三越伊勢丹HDは不採算店の閉鎖や人員削減でのコスト削減、旗艦店のリニューアル、上得意顧客の囲い込み、EC売り上げ促進策と、スクラップ&ビルトに熱心に取り組んでいたのだ。
その効果か、2022年2月1日の決算発表では、この3月期の連結最終損益が70億円の黒字見込みを発表。加えて、ワクチン接種の進展や新薬開発によるウィズコロナ、アフターコロナに向けた顧客の戻りが期待できることもある。
株価は、2月9日に昨年来高値の981円を付け、その後も堅調に推移。17日には昨年来高値を更新して988円を付けている。いよいよ、上向いてきた。
会社四季報・最新銘柄レポート(2022年2月22日号)によると、来期(2023年3月期)経常利益160億円(300%増益)を想定している。基本的に株価は企業業績にスライドすると考えれば、リアル店舗とECの効率運用を目指した販売体制の構築などの体質改善の進んだ三越伊勢丹HDの株価上昇は期待できるはず。現時点での株式の売却目標は、2015年6月の高値2400円の半分1200円前後を考えている。
(石井治彦)
【三越伊勢丹ホールディングス】(3099)
2022年3月1日現在 300株 平均取得単価 745円80銭
昨年来高値2022/2/17 988円
昨年来安値2021/1/ 5 569円
直近 終値2022/3/ 1 914円