賃上げ機運盛り上がりつつあった春闘に冷や水
木内氏と同じく、「原油高は、4月以降のアフターコロナの展望に冷や水を浴びせる」と懸念を示すのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。熊野氏のリポート「ウクライナ問題と日本経済~アフターコロナに冷や水~」(2月22日付)のなかで、「WTI価格が1バレル100ドルの大台を抜く可能性は十分にある」と危険性を指摘する=図表2参照。
熊野氏が特に強調したのは、ようやく日本経済にアフターコロナが見通せるようになり、賃上げの機運が盛り上がりつつあった春闘への悪影響だった。
「次なる変異株の登場がなかりせば、4月以降はアフターコロナを展望することが可能かもしれない」「タイミングが本当に悪いのは、現在が春闘の時期だからだ。経営者の心理は、ウクライナ情勢がさらに悪化して、最悪の事態になることを警戒する」「その不透明感は、春闘におけるベースアップ率を低めにしておきたいという慎重さへとつながる。岸田首相の唱える3%超の賃上げも、なかなか実現できない」
そして、「日本がデフレ脱却のチャンスを掴めそうなのに、ウクライナ発の地政学リスクがその行く手を阻むのである」と嘆くのだった。
(福田和郎)