政府の支援と日銀の金融緩和で「延命」
つまり、ゾンビ企業が減ったと楽観視するのは非常に危険だというわけだ。いったい、どういうことか。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、調査を担当した東京商工リサーチ情報部の原田三寛部長に詳しく話を聞いた。
――ゾンビ企業を延命させたことが日本経済の活性化の妨げになっていると指摘する経済アナリストが少なからずいます。中小企業を現在の半分ほどに減らし、ゾンビ企業を淘汰するべきだと主張する人が、かつて政府系審議委員会メンバーにいました。今回、ゾンビ企業の調査を行ったねらいには、そのように注目されていることも背景にあるのですか。
原田三寛さん「そうした議論があることは承知しています。一方で、中小企業を減らすと、サプライチェーンに影響を与えるという意見もあります。ゾンビ企業をコロナ後はどう支援するか、その是非をめぐって盛り上がっているものの、議論は分断状態にあります。
しかし、ゾンビ企業とは何かという定義さえ、国際決済銀行のものはありますが、ほかにもさまざまあってはっきりしていません。私たちは新しい定義を提案しつつ、どちらの議論にも味方せず、まずはゾンビ企業ってなんだ、という問題意識から調査しました」
――リーマン・ショック時にゾンビ企業の経営改善が行われず、「野ざらし」にされてきたのに、なぜ徐々に減ってきたのでしょうか。
原田さん「ゾンビ企業が『野ざらし』にされてきた理由は、中小企業の資金繰り支援のパラドックスですね。金融機関への返済に猶予(モラトリアム)を与えたために、経営改革の抜本的な対策はしなくてもいいや、という意識を多くの経営者に与えてしまった。それでもゾンビ企業が減ってきた理由は、長期の金融緩和で金利が下がったからです。
国際決済銀行の定義を思い出してください。数式の分母は『支払い利息』です。金利が下がれば、支払い利息も小さくなり、ゾンビ企業率も下がります。普通、業績が悪い企業はリスクを計算して借入金の利率が上がるものですが、いまはそうなっていません。数式の分子の利益、つまり『稼ぐ力』が大きくなったわけではありません」