ゾンビ企業は1.5万社~23万社...実態つかみにくい
ところで、ゾンビ企業の数字はどうなったのか――。国際決済銀行は、3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオが「1」を下回る企業を「ゾンビ企業」と定義している。
日本には全国に中小企業が約358万社あるが、東京商工リサーチが保有する財務データによると、リーマン・ショック後の2010年度~2012年度の中小企業の「ゾンビ企業率」は3年連続で10%を超えた(約36万社)。
以降は下降線をたどり、2019年以降は6%台に落ち着いた。これをもとにすると、ゾンビ企業数は現在23万社程度となる。ただ、企業はどれだけ黒字を出していてもキャッシュがなければ倒産する。いわゆる「黒字倒産」だ。
そこで、東京商工リサーチでは、「国際決済銀行基準」のゾンビ企業の分子を「営業利益+受取利息+受取配当金」ではなく、「営業キャッシュフロー」に換えて再計算した。「営業キャッシュフロー」とは、現金の流れを意味する。簡単に言うと、「本業で稼いだお金」。減価償却費や売掛金など多くの項目が入り、複雑な式になる。
その結果、リーマン・ショック後は概ね3%台後半で推移したが、その後は低下。2021年度は参考数値だが、2.1%となった。「国際決済銀行基準」によるゾンビ企業率と、東京商工リサーチによる「営業キャッシュフロー基準」では大きな差が出たかっこうだ。
具体的には、「国際決済銀行基準」では現在23万社。一方、東京商工リサーチによる「営業キャッシュフロー基準」では現在7.5万社。どちらを見ても、右肩下がりに減っており、現在過去最低であることがわかった=図表参照。(実は、リポートの中では別の「定義」を提起し、現在ゾンビ企業は1.5万社という分析も出している。)
いずれにしろ、ゾンビ企業は減少しているわけだから、中小企業の将来はそれほど心配することはないのだろうか。しかし、東京商工リサーチのリポートはこう締めくくるのだ。
「ゾンビ企業の数が過去最低という結果をどう受け止めるべきか。(コロナ禍の中の政府の)これまでの資金繰り支援で、事業再構築の必要性について中小企業の気づきを遠ざけたことも事実だろう。中小企業の間に広がった『危機意識の緩和』へ対応は急務だ。『うちはゾンビ企業でない。抜本再生の必要はない』『ゾンビ企業と言うな』と考える経営者は多い。そうした経営者に伴走支援する金融機関、再生実務家はどう対応するのか。模索へのサポートが今こそ求められる」