制裁によるエネルギー価格高騰、ロシア経済に有利か
この疑問を考えるにあたり、りそなアセットマネジメントは、マーケット・リポート「ウクライナ危機に際して:ロシア経済の分析 ロシア経済は制裁に対し一定のバッファー 長期戦は厳しい」(2月21日付)の中で、ロシア経済の特徴をこう説明する。
「足元のロシア景気は(中略)資源高を支えに高めの成長が続いています。IMF(国際通貨基金)は2022年のロシアの成長率をプラス2.8%、2023年をプラス2.1%と予測しています」「ロシア経済の基盤は原油・天然ガス等のエネルギー資源です」
こうしたなか、ロシアは予想される最悪の経済制裁である、国際決済ネットワークの「SWIFT、スイフト」から締め出されることに備えて、歳入上振れ分を基金(国民福祉基金)として積み立てている=図表2参照。つまり、足元で年間歳入額の3割程度を蓄積しているのだ。また、ロシア中央銀行は「SWIFT」の代替として、全世界をカバーする「SWIFT」よりは小規模だが、独自の決済ネットワークを整備しているようだ。
経済制裁に打たれ強い耐性を身に着けているというわけだ。このため、りそなアセットマネジメントでは、「緊張が長期化し、資源価格の高騰が続くことは、ロシアを利する点に留意する必要があります」と、経済制裁の逆効果の危険性を指摘する。
こうしたロシアに「強腰」に出られない欧米諸国のジレンマについて、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏も、リポート「第1弾の対ロ制裁よりも追加措置が世界経済・金融市場に大きな打撃に」(2月24日付)の中で、「経済制裁の第一弾は先進国への打撃が小さい措置に限定された」と指摘した。
「制裁措置はいずれもロシアに決定的な打撃を与えるものではない」「ロシアの原油、天然ガスの輸出、あるいはそれに関わるロシアの銀行を制裁対象とはしていない」「それを行えば、一段の原油、天然ガスの価格高騰が生じ、先進国経済にも大きな打撃となって跳ね返ってくる(中略)。いわゆる『ブーメラン効果』だ」
もっとも、今後ウクライナでのロシアの軍事行動が激化すれば、欧米諸国の制裁措置も厳しさを増さざるを得ない、と木内氏は分析する。では、どんな追加の経済制裁が出てくるだろうか。
「半導体などのハイテク製品を人工知能(AI)やロボットなど特定分野のロシア企業に輸出するのを事実上禁じることだ。それを通じて、ロシア経済の近代化、多様化を妨げる」「この措置は、先進国側には大きな打撃とはならない」