全国約1700の蔵元でつくる日本酒造組合中央会は、2021年の日本酒の「輸出金額」と「輸出数量」が過去最高になったと発表した。
輸出金額はなんと12年連続で前年を上回り、海外での日本酒の人気ぶりをうかがわせる。果たして日本酒は、どんな国・地域で飲まれているのだろうか。
さらには、21年の日本酒の輸出額は401億円で前年比66%増、輸出数量は3万2053キロリットルで同47%増と大幅に増えた。一体何が起きたのか。
海外の日本食レストランで親しまれる日本酒
日本酒造組合中央会によると、日本酒の総生産量は1973年がピークで、その後はビールやワインに押され漸減傾向にある。このうち海外への輸出数量は生産数量の7~8%に過ぎないが、「海外市場の伸びは日本酒業界にとっては大きな福音」という。
21年に日本酒の輸出が伸びたのは、コロナ禍や東京オリンピックとも関係があるようだ。
数量で輸出先のトップは米国で、2位以下は中国、香港、台湾、韓国と続く。金額では中国、米国、香港、シンガポール、台湾の順だ。
数量、金額とも米中が上位を占める。米国では日本酒の認知度が向上し、中国では高級酒として若者や富裕層に人気だという。
欧州ではこれまで英国が輸出数量、金額ともトップだったが、21年は数量・金額ともフランスが英国を抜いた。金額でフランスは総合9位、英国は同10位だった。
日本酒造組合中央会は20年にフランスソムリエ協会と提携し、フランスのソムリエに日本酒の啓発活動を行ってきた。その結果、「フランスでは日本酒をワインと同じく食中酒のひとつのジャンルとして考えるようになってきている」ようだ。
これまで日本酒は、海外の日本食レストランで飲まれることが多かった。米国、中国などでは日本食レストランが増えており、日本酒の輸出に結び付いている。21年はコロナ禍から経済活動を再開した米国、中国、香港、欧州などで日本食レストランが営業を再開し、日本酒の注文が増えたという。
外国語表示ラベルで工夫、味わいの多様化に注力
一方で、東京オリンピックで日本への注目が高まったものの、日本への渡航が困難な現状では、アジア圏を中心に日本の居酒屋をまねた日本食レストランが人気なのだという。
もちろん海外では、まだまだ日本酒の知名度は低い。日本食レストラン以外でも日本酒を提供してもらわなくては、販路拡大は難しい。そこで日本の酒造メーカーは、海外の消費者にわりやすい外国語表示のラベルや味わいの多様化に取り組んでいる。
近年は海外でも日本酒の冷蔵輸送が進み、大吟醸や吟醸、純米酒などが品質を保持した状態で流通可能になったことも消費拡大に貢献している。
「これまで『熱燗』一辺倒だった日本酒のイメージが刷新され、冷酒をワイングラスで飲むなど、さまざまなタイプの日本酒があることが海外でも認知され始めている」(日本酒造組合中央会)
海外では日本酒がオーガニック商品であることも魅力のひとつで、これをアピールする酒蔵もある。果たして、 今年も日本酒は海外で過去最高を更新できるか。(ジャーナリスト 白井俊郎)