星野リゾートも「運営」と「所有」分離の枠組み構築
今回、西武HDが31物件の売却に踏み切るのは、コロナ禍を機に実施する経営改革の一環だ。当座の現金を手に入れるだけではなく、資産を圧縮して経営効率を高める狙いがある。
なぜなら、売却後も施設の運営は西武HDの傘下企業がGICから請け負うことになり、「プリンスホテル」のブランドやサービスの提供を続けるからだ。西武HDに残るホテルやレジャー施設についても、運営と資産所有を傘下の別会社で担うことにする。
こうした「運営」と「所有」の分離は、宿泊業界で主流になりつつある。
たとえば、いち早く運営会社を目指す姿勢を表明した星野リゾートは、観光に特化した不動産投資信託「星野リゾート・リート」を上場させ、運営と所有を分離するための枠組みを構築している。リスクの分散や運営ノウハウの蓄積にメリットがあるとされる。
西武HDは筆頭株主だった米投資ファンドのサーベラス・グループが2017年に全株式を売却し、ようやく経営の自由度が高まった。2019年に本社を埼玉県所沢市から東京・池袋に移し、攻めの姿勢に転じようとしていた矢先に降ってわいたのがコロナ禍だった。
コロナ後の旅行・レジャー需要の復活を見据えながら、事業の立て直しに向けた改革は始まったばかりだ。(ジャーナリスト 済田経夫)