可決するか? 東芝「2分割」案 臨時株主総会に向けて続く関係者間の激しい駆け引き

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くすぶる東芝「丸ごと買収」案

   物言う株主の、そんな疑問などがさらには、株主還元の圧力へと向かい強まっている。東芝の、この先の2年で「3000億円還元」方針は、もちろん、こうした要求に応えるものだが、今回打ち出した空調子会社の東芝キャリア(神奈川県川崎市)などの売却益2000億円は、ほぼ丸ごと株主還元に回る計算で、成長への投資と株主還元の両立は容易ではない。

   物言う株主からは、ITサービス事業や半導体製造装置事業などの追加売却を求める声も出ているというありさまだ。

   まだある。2021年4月に当時の車谷社長が、自身がかつて会長を務めた英系投資ファンドによる丸ごと買収(非上場化)に動き、辞任に追い込まれる一因になったが、物言う株主の一部はこうした外部による丸ごと買収を、今も求めている。物言う株主側も、株主価値の向上で要求は一致しているものの、東芝の経営再建には微妙な温度差があるわけだ。

   このように、さまざまな利害関係者の思惑が交錯する中で開かれる3月の臨時株主総会は、議決方法も関心を集める。

   本来、重要な事業を切り離す今回のような場合、株主総会で3分の2以上の賛成による「特別決議」が必要だ。ただ、東芝は今度の臨時株主総会で、単純過半数での可決を目指す。綱川智(つなかわ・さとし)社長兼CEOは2月14日のオンライン会見で、「分割案はまだ説明したばかりなので、これから丁寧に株主に話していきたい。しっかりと説明して、......株主の意向、方向性を確認したい」と述べた。

   法的拘束力がない「意向確認」という位置づけで、「(特別決議では)たとえば6割の賛成があっても否決される。過半数の株主の意思を尊重すべきだと考えている」(綱川社長)と説明する。実際に分割を実施する2023年の定時株主総会では、特別決議を諮るという。

   しかし、物言う株主からはこれにも反発の声が出ている。主要な物言う株主の議決権は合算で3割程度を握っているとみられる。東芝としては物言う株以外の「サイレントマジョリティ(静かな多数派)」が「味方」になってくれることを期待しているわけだが、2分割案に賛同が集まる保証はない。

   仮に否決された場合、綱川社長は「まったく別の選択肢にするかなど真摯に検討したい」と、弱気ともとれる発言をしており、非上場化(丸ごと買収)の再浮上の可能性も取りざたされている。

   2分割案は可決されるのか。あるいは可決されても、賛成の比率はどの程度なのか――。3月24日の臨時総会に向け、関係者間の駆け引きが続く。(ジャーナリスト 済田経夫)

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