2021年に本社を移転した企業は全国で2258社にのぼり、このうち首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)から地方へ、本社または本社機能を移転した企業が351社にのぼったことがわかった。前年から2割超の大幅増加となった。
帝国データバンクが「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」を、2022年2月15日に発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で、足もとではテレワークによる在宅勤務が定着しつつあり、本社などの主要拠点を都市部から地方に移転、分散する動きが急速に進んでいる。
アミューズ、日本ミシュランなどが東京を脱出!
コロナ禍によるテレワークの浸透で本社や事務所などへの出社が減り、オフィスが東京などにあることがあまり重視されなくなってきたなか、本社などを都市部から地方に移転、分散する動きが加速化している。
こうしたなか、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)から、地方へ本社を移した企業の数は2021年に351社にのぼった。転出企業が300社を超えるのは2002年以来19年ぶりで、1994年の328社を大幅に上回り、過去最多を更新した。
2021年に本社を首都圏から移転した、または移転計画を明らかにした企業は、大手芸能事務所のアミューズ(東京 → 山梨県富士河口湖町)のほか、フランスのタイヤ大手の日本ミシュランタイヤ(日本法人。東京 → 群馬県太田市)、光学・電子製品向け材料部品製造のデクセリアルズ(東京 → 栃木県下野市)などがある。
その一方で、地方から首都圏へ本社を移転した企業は328社。この結果、2021年における首都圏の本社移転動向は、転出社数が転入を23社上回る「転出超過」となった。首都圏で転出超過となるのは2010年以来11年ぶりのこと。
首都圏への移転元で最も多いのは、「大阪府」の67社だった。
移転先に北海道、コロナ禍前から5倍に急増
首都圏からの移転先で、最も多いのは「大阪府」の46 社。次いで「茨城県」の37 社だった。大阪府への転出社数は2 年連続で増えたほか、2010 年の41 社を上回り過去最多を更新した。
3 位の「北海道」は33社で、コロナ禍前の2019 年の7 社から約5 倍に急増した。首都圏から北海道への移転社数としては過去最多となる。帝国データバンクは、人口密度の低さなどから、本社機能や研究施設の受け皿として北海道が注目されていることが背景にある、とみている。
また、「宮城県」(19 年との比較でプラス10 社)や「岡山県」(プラス9 社)、「兵庫県」(プラス7 社)などは、コロナ禍前から目立って増加。「福岡県」(20 社)や「宮城県」(14 社)、「広島県」(10 社)なども、首都圏からの転出先として過去最多(広島県は最多タイ)を記録した。
これまで、首都圏からの本社移転先は大都市部や北関東3 県など首都圏近郊が多かったが、リモートワークが定着したことで、遠隔地のほか、人口密度の低い地方の中核都市が本社移転先の有力候補に新たに浮上している。
さらに、首都圏からの転出企業を売上高規模別にみると、最も多かったのは「1億円未満」で176社となり、多くが小規模な企業だった。なかでも、5000万円未満の小規模企業、設立間もないスタートアップの割合はコロナ禍前を大きく上回ることがわかった。
なお、調査は2021年に首都圏と地方間を跨いだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主、非営利法人など含む)について、保有する企業概要データベースのうち業種や規模が判明している企業を対象に分析した。本社は、実質的な本社機能(事務所など)が所在する事業所をいう。