コロナは「住む場所の自由」を拡げた
賃貸需要は本来、どこに移動するにも便利であること、生活利便施設が揃っていて買物や飲食などに困らないこと、通勤・通学だけでなく余暇を過ごす際にも便利であること......などが人気の条件として挙げられます。
ところが、コロナ禍が継続していることで、利便性よりもコストや居住性が優先されているようです。テレワークやオンライン授業が定着したことから、賃料相場が比較的安価で部屋も広く、のびのび暮らせる郊外エリアでの生活をイメージするユーザーが増えているものと考えられます。
これまでのように、自宅とオフィス、自宅と学校、といった最も重視すべき「動線」を考慮せずに、比較的自由に住むところを選ぶことができるようになった、と見ることもできます。
この点では、コロナは人々の「移動の自由」を奪ったというより、「住む場所の自由」を拡げたという見方もできそうです。
皮肉なことに、いくら笛を吹いても一向に踊る気配のなかった「働き方改革」はコロナ禍で急速に進捗しました。また、この首都圏での都心から郊外方面へのニーズの動きを、「地方創生」の文脈で語るケースまで出てきて、都市部に一極集中したヒト・モノ・カネを是正する契機としたい、との話も伝わってきています。
便利で効率的で快適な生活が実現可能であるからこそ、人は都市部に集中するわけです。そのような生活装置が地方に少ないことが根本原因であるにもかかわらず、その解決は図らずに、コロナを是正に活用するのは本末転倒のそしりを免れません。
次回の《後編》では、首都圏以外の各圏域のランキングとその背景を探っていきます。
(中山登志朗)