最新2022年「借りて住みたい街」に見るユーザー意識の変化《前編》 コロナの影響でランキング激変「首都圏」(中山登志朗)

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首都圏の賃貸ユーザーの意向は明確に「郊外化」

   そもそも「借りて住みたい街」ランキングは、憧れの住んでみたい街を尋ねるアンケート調査ではありません。

   実際にユーザーがLIFULL HOME'Sに掲載された物件を検索し、問い合わせるなどのアクションを起こした物件を対象に、集計しています。つまり、「いま実際に住むことをイメージして探している街」のランキングで、社内では通称「本気で住みたい街」ランキングと言われています。

   首都圏は、昨年(2021年)兆しがあった「郊外化傾向」がさらに鮮明になりました。

   前回初めてトップになった神奈川県央部の「本厚木」が2年連続1位となり、コロナ禍での人気と注目度の高さが一過性のものではなかったことが明らかです。2位も「大宮」(前回2位)、3位「柏」(同9位)、4位「八王子」(同4位)、5位「西川口」(同12位)と、ベスト5にこれまで人気の高かった都心・近郊の街は皆無です。ベスト10を見ても、東京23区内の街は「葛西」のみとほぼ準近郊・郊外の駅で占められていて、「賃貸は、郊外で住宅を探しているユーザーが増えている」ことが浮き彫りになりました。

   上位にランクされている郊外の街は、いずれも都心方面にほぼ鉄道の乗り換えなしでダイレクトアクセスが可能なところばかり。ということは、通勤・通学の便を考慮した現実的な選択がなされていると見ることができます。

   反対に、2020年まで4年連続1位だった「池袋」は前回の5位からさらに順位を下げて12位でした。これまで交通と生活の利便性で圧倒的優位だった都心・近郊の駅が、今回も順位を下げる結果となりました。

   都心・近郊の駅では6位に「葛西」(前回3位)、12位に「池袋」(同5位)、18位に「高円寺」(同11位)、21位に「三軒茶屋」(同16位)がランクインしていますが、いずれもランクを下げており、この点でも賃貸ユーザーの意識が「郊外」方面に向かっていることがわかります。もう少し広げてベスト30を見ても、都心近郊がわずか7駅しかランクインしていないことも、コロナ禍での象徴的な状況を示しています。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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