「人見知り」は子どもだけではなく、近年、大人にもかなりいるようだ。
たとえば、小学館の女性誌「Domani」編集部が30~45歳のワーキングマザーを対象に行った「自分は人見知りするほうだと思いますか?」というアンケート調査(2020年5月9日付ウェブサイト)を見たら、69.7%が「はい」と答えている。人見知りのせいで職場になじめなかったり、仕事がうまくいかなくなったりする人は少なくないようだ。
そんななか、転職支援サービスの「ビズヒッツ」(三重県鈴鹿市)が2022年2月16日、「人見知りに向いている仕事ランキング」を出した。もしかして、自分は人見知りではないかと思っているあなた、参考にしてはいかが――。
「お客様に説明がうまくできず、時給を下げられた」
調査では、まず人見知りだと自覚している男女500人に「人見知りが原因で仕事に支障が出たことはあるか?」と聞くと、71.6%の人が「ある」と答えた。たとえば、こんなケースだった。
「声が小さいとクレームを受けた」(20代女性)
「新規のお客様訪問をする際、非常に緊張して上手に話せないことがあった」(30代男性)
「コピー用紙を補充したいのに聞けなくて、誰かが補充してくれるまで待った」(40代 男性)
なかには「お客様への説明がうまくできずクレームになり、時給を下げられた」という人もいるから深刻だ。
次に、「人見知りが原因で仕事がツライと思うのはどんなとき?」と聞くと、1位は「報連相(報告・連絡・相談)するとき」、2位は「職場に馴染みにくいとき」、3位は「顧客対応するとき」と続いた(図表1参照)。
上司への「ホウレンソウ(報連相)」は仕事の基本だ。ほぼ毎日あることだから、人見知りの人にとっては大きなストレスだろう。こんな嘆きの声が相次いだ。
「報連相が大事だと理解しているのに避けたくなる。話しかけるタイミングなどに気を遣うため、とにかく疲れる」(20代女性)
「上司への連絡や報告が上手くできなくて、何度も怒られた経験がある」(40代 男性)
「職場で浮いてしまい、楽しいことがない」
また、2位の「職場に馴染みにくいとき」も同僚との付き合いは仕事をスムーズに進めるうえでそれなりに欠かせないから、会話が苦手の人にはツライに違いない。
「周りの人が和気あいあいとしているのを見ると疎外感があり、自分はこの会社にとって価値があるのかと悩む」(20代女性)
「職場で浮いてしまい、楽しいことがない」(30代男性)
などと悩みを訴える。なかには慣れる前に退職してしまう人もいる。
3位の「顧客対応するとき」は、仕事にダイレクトに影響を与えるから、さらに深刻だ。
「初めてのお客様や口数の少ないお客様に対して、どう接したらよいかわからない」(20代女性)
「営業で交渉や商談が避けられないときはお腹が痛くなる」(30代男性)
「取引先やお客様などと話したくなくても話さなければならないときに、『仕事がツライ』と強く感じる」(40代男性)
......。
なかには「自己嫌悪に陥ってしまう」と嘆く人もいた。
「工場は人見知りが多い職場なので、浮かない」
このように、人見知りの人に苦労は絶えない。そこで、「人見知りの人に向いている仕事はどれかと思うか」と聞くと、ダントツの1位になったのは「工場・製造」だった。2位「データ入力」、3位「事務」、4位「倉庫・軽作業」と続く(図表2参照)。
それぞれの仕事について、人見知りの人にとっての仕事のしやすさを語ってもらうと、1位の「工場・製造」ではこうだ。
「黙々と作業でき、報告さえできればあとはなんとかなる」(20代女性)
「向き合うのが人ではなくて機械だから。人と接する時間が少なくてすむ」(30代男性)
「他の人と話はするが、営業みたいに話が多いわけではないので助かる」(40代男性)
......。
会話が少なく、自分のペースでできる利点が挙げられた。一方では、「人見知りが多い職場なので、人見知りでも浮かない」という指摘もあった。2位の「データ入力」にはこんな声が――。
「報告や指示を出されるとき以外はまず会話をすることはないので、おススメ」(30代男性)
「人にかかわることが少なく、最終チェックも入ることからやり直しもしやすく、自己嫌悪に陥りにくい」(40代女性)
などと、工場勤務と同じく「会話が少ない」「自分のペースでできる」という意見が目立った。
飲食店が人見知りに向くのはマニュアルがあるから
ところで、7位に「接客・飲食」、8位に「コールセンター」が入ったのはどういうわけだろうか。これらは、人と接する職業なのだ。理由を探ると、実は「接客マニュアルがある」「1回きりの対応だから」というのだ。実際の体験者はこう指摘する。
「客と長くかかわらないので、割り切って仕事ができる」(コンビニ店員・30代男性)
「基本的に電話番なので、相手を見ずに話せる」(引越し会社のコールセンター・20代男性)
マニュアル通りに話せば済むし、雑談をする必要もない。それに、「仕事を通じて少しずつ人見知りを克服できる」という意見もあった。
調査は、人見知りだと自覚している全国の500人(男性275人・女性225人)を対象に2021年12月27日~2022年1月8日までインターネットで行った。
(福田和郎)