「ワリエワ・スキャンダル」は五輪史上最大のスキャンダル?! 「最後に笑うのはプーチン大統領」の現実味(井津川倫子)

ワシントン・ポスト紙「ワリエワ騒動で唯一の勝者はロシアだけだ」

   今回の「ワリエワ・スキャンダル」では、米メディアの強い報道ぶりが目立ちます。スポーツメディアだけでなく、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙といった高級メディアが連日大きく取り上げていることに驚きますが、ドーピング疑惑を通じてロシアという国の問題点を浮き彫りにしていることに気がつきます。

   ワシントン・ポスト紙は「ワリエワ騒動」の唯一の勝者は「ロシアだけだ」と伝えています。 

Russia Is the only winner in the Kamila Valieva mess
(カミラ・ワリエワ騒動の唯一の勝者はロシアだけだ:ワシントンポスト紙)
mess:騒動、騒ぎ

   各国のメディアが伝えているように、ワリエワ選手に代表される「ロシアの若年女子フィギュア選手」の活躍は、2014年のソチ五輪から始まりました。その前のバンクーバー五輪では、韓国のキム・ヨナ選手や浅田真央選手、カナダのロシェット選手が女子シングルの表彰台を占めたことから分かるように、ロシアの女子選手はしばらく低迷していました。

   ところが、自国開催となったソチ五輪では、15歳(当時)のユリア・リプニツカヤ選手が団体戦で金メダルを獲得。2018年の平昌五輪では、これまた15歳(当時)のアリーナ・ザギトワ選手とエフゲニア・メドベージェフ選手が女子シングルの金・銀メダルを独占して、その後も「ロシア若年選手」の快進撃は続いています。

   海外メディアは、3大会連続して「15歳の新星」が登場していることは、決して偶然ではないと指摘しています。これらの選手を育てているエテリ・トュトベリゼコーチの存在に注目が集まっていますが、ワシントン・ポストはさらに一歩踏み込んで、トュトベリゼコーチも「国家の影響を受けている」と示唆しています。

   ロシアでは、五輪のコーチも国家情報機関にコントロールされていることや、ドーピング疑惑の背景にも国家の存在があることを赤裸々に伝えていて、まるでスパイ小説のようなおどろおどろしい展開ですが、たとえ選手が短命に終わったり、コーチに批判が集まったりしても、国家としては「想定内」だということでしょうか。

   たしかに、プーチン大統領にとっては、今回の「ワリエワ・スキャンダル」でロシア国内の反欧米感情が高まり、自身のカリスマ性を示すことができれば満足な結果でしょう。ウクライナ情勢もしかり、ドーピング疑惑もしかりですが、世界のメディアが騒げば騒ぐほど存在感を増すプーチン大統領。不気味に微笑む姿が目に浮かびます。

   それでは、「今回のニュースな英語」「at the center of」(~の渦中で)を使った表現を紹介します。

Valieva is at the center of doping scandal
(ワリエワ選手は、ドーピングスキャンダルのまっただ中にいる)

He is at the center of bribery scandal
(彼は、贈賄疑惑の渦中にいる)

Macron visit Putin at the center of Ukraine crisis
(マクロン大統領がウクライナ危機のまっただ中にプーチン大統領を訪問した)

   世界中が固唾をのんで見守るウクライナ騒動。女子フィギュアに対するプーチン大統領の強い思いを考慮すると、少なくとも決勝が終わるまでは大きな動きは無いように思えますが......。答えは、プーチン大統領のみぞ知る、のでしょう。

(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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