「ワリエワ・スキャンダル」は五輪史上最大のスキャンダル?! 「最後に笑うのはプーチン大統領」の現実味(井津川倫子)

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   2022年2月20日に閉幕する北京オリンピックは、すっかりロシアの15歳の少女・カミラ・ワリエワ選手に話題を奪われてしまいました。

   女子フィギュア界の新星によるそのドーピング疑惑は、「ワリエワ・スキャンダル」と称されて世界中のメディアを席巻! とりわけ米メディアの過熱ぶりが目立ちます。メディアの矛先はワリエワ選手を取り巻く大人たちに向けられていますが、「結局、ロシアの一人勝ち」との声も。「ワリエワ・スキャンダル」の背景を追ってみました。

  • 「ワリエワ・スキャンダル」の背景とは(写真はイメージ)
    「ワリエワ・スキャンダル」の背景とは(写真はイメージ)
  • 「ワリエワ・スキャンダル」の背景とは(写真はイメージ)

ロシア人記者まで脅しに加担?「ずたずたに引き裂いてやるぞ!」

   4年の一度のスポーツの祭典が、ワリエワ選手一色になってしまいました。スピードスケートやアルペンスキー、アイスホッケーといった人気競技の話題をかき消すように、連日のようにトップニュースを飾る「ワリエワ・スキャンダル」。各国メディアが一様に、「渦中のワリエワ選手」について報じています。

Valieva has been at the center of a storm of controversy
(ワリエワ選手は、激しい論争の渦中にいる:ドイツメディア)
at the center of:~の真ん中に、渦中に、まっただ中に

   論争どころか、まるでワリエワ選手が世界の中心にいるのではないかと思わせるような加熱報道に驚くばかりですが、意外なほどにワリエワ選手の責任を追求したり、非難したりする声は聞こえてきません。報道が深まるにつれて浮き彫りになったのは、ワリエワ選手を取り囲む大人たちの異様さ。まるで「ワリエワ狂騒曲」といった様相です。

   たとえば、英紙ガーディアンが報じたのは、「ワリエワ・スキャンダル」の第一報を報じたジャーナリストへの殺害予告です。

The journalists who broke the story of Valieva's positive drugs test say they have faced death threats
(ワリエワ選手のドラッグテスト陽性を報じたジャーナリストが、殺人の脅迫を受けていると語った:英紙ガーディアン)

   さらに、五輪のメディアセンターでワリエワ選手に「ドーピングをしたのか?」と問いかけた別の英国人記者が、ロシア人記者に取り囲まれて「15歳の少女にふさわしくない質問をするな」と迫られたことや、「Our Russian journalists can tear you to pieces!」(俺たちロシア人ジャーナリストは、お前をずたずたに引き裂くこともできるんだぞ)と脅されたことなどを明らかにしています。

   それにしても、ジャーナリストを名乗る立場の人間が、「ずたずたに引き裂いてやる!」といった脅し文句を吐くとはにわかには信じられませんが、米メディアはロシア政府の「介入」も伝えています。

   米ネットメディアは、ロシア政府高官が「英国人記者が、まるでパブで仲間に話すような強い口調で、まだ子どもにすぎないワリエワに野蛮な質問を投げつけた」と批判。さらに、ワリエワ選手に対して「go proudly and beat everyone」(誇りを持って、みんなをやっつけてしまえ!)という強いメッセージを送ったと報じています。

   「ワリエワ・スキャンダル」は国家を巻き込んだ騒動に発展するのでしょうか。「まだ子どもにすぎない」はずのワリエワ選手や、競技の成果を超越した世界での出来事に、スポーツのあり方を改めて考えさせられました。

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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