日本に有力な技術はあるが、装置開発で遅れ
ただ、海外に比べ後れは明らかだ。
米国はIBMやグーグルなど民間の技術開発が活発なのに加え、国としても2019年からの5年間で最大13億ドルを投じる。
中国は1兆円超とされる資金を投じた研究拠点の整備(安徽省)のほか、北京―上海間に2000キロメートルに及ぶ量子暗号通信網を築き、さらに拡大すると伝えられるなど、国を挙げて開発を強化する。
欧州では英国やオランダが国際的な研究拠点を置いて、民間資金を呼び込んでいる――といった具合だ。
日本は先述の東芝の量子暗号技術など、有力な技術も部分的には持つが、それを生かす装置の開発などで遅れを取る。量子コンピューターでも理化学研究所などが心臓部になる半導体チップの高精度な操作に成功するといったニュース(22年1月20日朝日新聞電子版)など、個別には成果もあげているが、自前でコンピューターとして組み上げるには至っていない。
民間の調べで量子技術関連の特許は中国3074件、アメリカ1557件に対し、日本は750件と、水をあけられている。
政府は新戦略の策定と予算措置で巻き返しを図るが、財政状況の厳しさもあり、民間資金を動員した官民挙げての取り組みが重要になる。(ジャーナリスト 白井俊郎)