大手小売りグループのセブン&アイ・ホールディングス(HD)が、傘下の百貨店を運営するそごう・西武の売却に動き始めた。
「売却検討」と報じられた2022年2月1日、「あらゆる可能性を排除せずに検討を行っている」と発表した。関係者によると、2月中にも1次入札をする予定という。
2006年にそごう・西武を傘下に収め、スーパーやコンビニにとどまらない「総合小売り」を目指してきた経営戦略は転機を迎える。
そごう・西武「地域1番店」になれなかった悲哀
一般に業態を超えた経営統合が目指すのは「シナジー効果」。つまり、相互に補完し合い、相乗効果を生むことだ。セブン&アイHDがそうごう・西武を手放すのは、シナジーを生めなかったということに尽きる。
セブン&アイHDは、ミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を子会社化した2006年当時、伸び盛りのコンビニ「セブン―イレブン」とスーパー「イトーヨーカドー」に百貨店を加え、商品の共通化などによる相乗効果を狙った。
その前提は、社会の階層化がはっきりして、階層により利用する業態が固定化している米国と比べ、日本は各顧客が時と場合によって百貨店から専門店、スーパー、コンビニなどを使い分けるという分析だった。そうであれば、各業態が結びつき、顧客情報を共有していけば相乗効果を生むという計算だ。
その柱の一つが、セブン&アイHDの商品開発力を示すプライベートブランド(PB)の活用だった。コンビニで扱うPB「セブンプレミアム」をデパ地下に導入したり、カシミアセーターをスーパーと百貨店で共同調達したりした。
しかし、「百貨店としての個性がかえって薄れた」(関係者)ともいわれ、いずれにせよ、 売り上げの底上げにはつながらなかった。
そもそも、百貨店の地盤沈下は加速している。インターネット通販が広がるなか、インバウンド(訪日外国人)消費での巻き返しに期待したが、新型コロナウイルスのパンデミックで大きな打撃を受けた。
百貨店の強みは衣料品を中心としたファッションだが、国産の中堅アパレルは不振が目立ち、売れているのは海外の高級ブランドぐらい。その高級ブランドは地域1番店に集中し、池袋と横浜を除くと2番店以下が多いそごう・西武は厳しい状況に追い込まれた。結局、地方の店は持ちこたえられず、2006年のセブン&アイHD傘下入り時点の28店舗が、いまや10店舗にまで激減していた。