「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
コロナ禍で進む病院の再編
2月14日(2022年)発売の「週刊東洋経済」(2022年2月19日号)の特集は、「病院サバイバル」。人口の減少、資金不足、後継者難、そして医療需要とのミスマッチ。コロナ後を見据え、大再編に突入した病院の生き残り策を深掘りしている。
「病院淘汰のカウントダウン」が始まったという巻頭記事が伝えているのは、宮城県が打ち出した県内4病院の再編方針だ。仙台赤十字病院(仙台市)と県立がんセンター(名取市)を統合、東北労災病院(仙台市)と県立精神医療センター(名取市)を移転し合築することが示された。
仙台市から大きな2つの病院が市外へ移転することになり、市当局と市民から反発の声が上がっている。仙台赤十字病院などは赤字が続き、現立がんセンターは県の財政支援によって黒字になっているが、実質的に赤字であることが背景にあるらしい。
厚生労働省は2019年、全国の424の公立・公的病院の統合再編が必要だと、病院名を発表し波紋を呼んだ。その後のコロナ禍で、そうした病院が大きな役割を果たしたため、再編議論はおさまったが、消えたわけではないようだ。
再編の方針が明らかになったのは宮城県ばかりではない。特集記事では触れていないが、青森県でも県立中央病院(青森市)と青森市民病院が統合、弘前市立病院と国立病院機構弘前病院の統合が決まっている。公的・公立病院が身近にあって当たり前という時代は過ぎようとしている。
なぜなのか。日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で人口当たりの病床数が圧倒的に多い一方で、医者や看護師は少ないため、医療従事者が分散しているという事情がある。診療体制が充実するため、再編を歓迎する病院当事者も少なくないのだ。
民間病院はどうか。日本の病院は医療法人(民間)が7割を占めている。病床数では5割を占めている。コロナ禍は、患者の来院が減ったり、診察や検査が減ったりしたため、利益率はマイナス1%台に悪化した。もともと収益率は高くなかったので、コロナ後を不安視する経営者は多いという。そこで、ファンドの動きが活発化している。
医療法人の決算を編集部は独自に入手。増収率トップ15と減収率トップ15を掲載している。最も減収率が大きかったのは五星会(神奈川県)だ。20年4月に菊名記念病院で新型コロナウイルスに多くの医師が感染するクラスターが発生、一時的に病院を閉鎖する事態になった。
一方、売上高ランキングでトップになったのは徳洲会(大阪府)だ。67%の増益。全国で71病院を運営する巨大グループだ。全体でコロナ病床を835床儲け、空床補償は100億円以上計上された。ふだん、医療法人のこうした数字を眼にする機会はあまりないので、興味深い。売上高上位220法人のうち120法人が増収している。
読み進めると、コロナ禍で個人クリニックの廃業は最多になりそうだ、という記事も。帝国データバンクによると、昨年のクリニックの休廃業・解散、倒産件数は450件で過去最多になった。耳鼻咽喉科、小児科、整形外科、内科の患者減が経営不振につながったようだ。
これにくわえ、東京や大阪などの都心部で開業が増えたこと、経営者の高齢化も淘汰の要因だという。
医学部入試についても言及している。この40年間で、入試偏差値は爆上がりした。しかし、2022年は医学部の志願者数がさらに減る、という医学部受験専門予備校の見方も紹介。医師のブラック労働の実態が知られ、ここ数年、医学部の志願者数は減っているというのだ。コロナ禍で逼迫する医療現場――。その姿を若者世代は敏感に観察している。
伝わる文章を書く秘訣とは?
「週刊ダイヤモンド」(2022年2月19日号)の特集は、「伝わる文章術 仕事で成功!『書く力』講座」。編著書累計1300万部という古賀史健さんが誌上で特別講義をしている。 古賀さんは文章を書く前に知っておきたい3つの大原則を挙げている。
・いい文章は、ラブレターである→文章の目的は、相手を「動かす」こと
・いい文章は、取引(deal)である→「読む時間」という対価に見合った価値を提供する
・いい文章には、取材がある→「日常に対する取材」で、情報価値は高ま
そしていざ、文章を書くときの3つのポイントはこうだ。
・「主張→理由→事実」の3点を描く→読み手の納得には、ロジックが不可欠
・「Bの接続詞」を使いこなす→but(しかし)、because(なぜならば)でメリハリを!
・「一文は短く」の原則を守る→主語と述語の距離を近づければ、意図が伝わりやすくなる
さらに、仕上げととして、「意外性」と「比喩」が、面白い文章には欠かせない、と書いている。
ビジネス文章術については、「伝える力【話す・書く】研究所」所長の山口拓朗さんが以下のように解説している。
仕事メールの極意は「結論ファースト」。くどい前提や背景説明、もったいぶった表現はNGだ。また、「1メール=1用件」が原則。「白っぽい文章」が伝わるメールの鉄則だ。
プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利さんの「プレゼンで絶対にやってはいけない『5つの禁じ手』」も参考になるだろう。
1 13文字の法則を破ってはいけない(ヤフーニュースのタイトルが13字以内)
2 推奨フォントとフォントサイズを死守、大き過ぎても小さ過ぎてもNG
3 下線・斜体・影文字などの装飾は禁止
4 キーメッセージは真ん中よりも下に置いてはいけない
5 ビジースライドは禁止(1枚のスライドは20秒で理解できる情報量に)
このほかに、英文メールがうまくなる文章術、リモートワークの文章術、ビジネスチャットの文章術などを紹介している。
文章術のベストセラー100冊のポイントをまとめた記事もある。「文章はシンプルに」「伝わる文章には『型』がある」「文章は必ず『推敲』する」などを挙げている。
「週刊ダイヤモンド」は、忘れた頃にこうした文章術の特集を組む。ビジネスパーソンにとって、文章は死活につながるツールである。日頃、文章を書き慣れている評者にとっても、心に留めおきたいポイントがいくつもあった。
税理士・会計士にも冬の時代
「週刊エコノミスト」(2022年2月22日号)の特集は、「これから勝てる税理士会計士」。2月15日から確定申告の受付が始まった。顧問税理士と二人三脚で決算書類作成や申告準備に当たっている中小企業の経営者には気になる内容だ。
顧問には税理プラス経理プラス付加価値が求められているというのが、巻頭記事の主張だ。税理士を交代し、経営が劇的に改善した事例を紹介している。
その反面教師のような「こんな税理士は捨てられる」という指摘が、当事者には刺さる内容だろう。
〇税務と経理しかやらない割には顧問料が高い
〇決算数値に疑義を挟まない単なる「計算係」
〇補助金申請や事業継承の知見がない、提案だけで遂行能力がない
〇業界事情を理解していない
〇電話、メール、チャットへの返事が1日以上かかる
税理士業界でいま喫緊の課題になっているのが、今年1月1日施行の改正電子帳簿保存法(電帳法)と2023年10月1日からスタートする消費税のインボイス制度への対応だ。デジタル化対応の「踏み絵」になる可能性があり、税理士淘汰の呼び水になるかもしれない、と指摘している。
「大学生の子どもには『税理士には絶対になるな』と言っている」「複数の会計ソフトに対応できない税理士が大量廃業するのでは」などの本音トークも紹介している。
一方、会計士の業界でも、大手監査法人が中小規模の上場企業の監査から撤退し、準大手や中小監査法人が上場企業監査を担当する動きがあるという。
会計制度の変更や監査項目の増加、不正発覚などで業務は複雑で過大になる一方だ。強烈なコンプライアンスに悲鳴を上げる会計士の声も。弁護士に次ぐ、文系「士」業の華と言われた、税理士と会計士にも冬の時代が来たようだ。
(渡辺淳悦)