国内玩具大手、タカラトミーの株価が2022年2月8日の東京株式市場で前日終値比110円(9.5%)高の1274円まで上昇し、昨年来高値を更新した。
前日取引終了後に2022年3月期連結決算の業績予想を上方修正し、新たな株主還元策を発表したことが好感された。
その後もウクライナ情勢への警戒などから世界的に株が売られるなかにあって高値圏を維持しており、投資家が成長力を評価していることをうかがわせる。
年末年始商戦が順調、「ガチャ」事業も拡大
それでは、上方修正の内容をみてみよう。
売上高は従来予想より50億円多い1600億円(前期比13.3%増)。営業利益は同30億円多い110億円(同55.4%増)。経常利益は同34億円多い110億円(同53.4%増)。最終利益は同10億円多い75億円(同39.5%増)を見込む。
修正の理由についてタカラトミーは「最大商戦期である年末年始商戦において玩具出荷が順調に推移したほか、商業施設内のゲーム機、カプセル玩具販売の『ガチャ』事業も拡大が続いた」ことを挙げている。
第4四半期(2022年1~3月期)は新年度に向けた広告宣伝などの先行投資を行う一方、海外における物流混乱に伴うコスト高騰の影響が引き続き見込まれるが、通期としてはコスト削減の徹底などにより利益が増える見通しだ、としている。
ちなみに、同時に発表した2021年4~12月期連結決算で最終利益が前年同期比80.7%増の98億円に達するなど、各利益が通期の予想をも上回っている。が、「圧倒的に12月に稼ぐ」タカラトミーの特異性ゆえであり、2022年1~3月期については各利益とも赤字になる見通しだ。
一方、株主還元策として期末配当を従来予想の10円から20円に引き上げ、中間期と合わせた年間配当は30円(前期実績比12円50銭増)とする。自己株式を除く発行済み株式の1.08%にあたる100万株、13億円を上限に2月8日から4月30日に取得する自社株買いも実施する。
トミカ、プラレール、リカちゃん...リアル玩具で人気
タカラトミーは2006年にトミーとタカラが合併して誕生した玩具メーカーで、バンダイナムコホールディングスと並ぶ大手だ。
ただ、バンダイの主力事業がオンラインゲームであるのに対してタカラトミーといえば、ミニカーの「トミカ」や「チョロQ」、列車の「プラレール」、「リカちゃん」関連、「人生ゲーム」、「黒ひげ危機一髪」、トレーディングカードゲーム「デュエル・マスターズ」などの、いわばリアル玩具で支持を得ている。
今期においては、トミカなら電動ドライバーで「組み立て」「分解」ができるセット、リカちゃんならバーベキューを疑似体験するセットなどが子供たちに人気だったという。
2021年の新語・流行語トップ10に入った「親ガチャ」のもとともいえるカプセル玩具販売マシンは、グループ会社「ペニイ」が全国に約3万台を展開するもので、ショッピングモールの遊休スペース向けなどへの引き合いが強い。さらには、21年7月に発売した液晶画面の中のキャラクターと直接触れ合っているかのように遊べる新触感液晶玩具「ぷにるんず」が好評だったように、新たな玩具作りへの挑戦も続けている。
タカラトミーの海外売上高比率は2割を超える程度。とはいえ、少子化の進む国内でも着実に収益をあげる体質を強化していることに対し、投資家が見直し買いをしているといえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)