世界で増える自宅での飲酒機会
営業面の理由もある。日本市場で争うライバルは、サントリーのほかにアサヒやキリンといったアルコール飲料を主力として清涼飲料水も手掛けるメーカーばかり。コンビニエンスストアや量販店は、メーカーがアルコール飲料と清涼飲料水の両方を取り扱うことに慣れている。また、アルコール飲料の中でも、缶酎ハイは数少ない成長分野であり、清涼飲料水で培ったさまざまなノウハウを生かしやすいという側面もある。
檸檬堂は商品ラインアップや宣伝戦略が消費者のハートをつかみ、競合品より数十円高い価格設定ながらもヒット商品に。今年2月に全国発売する「よわない檸檬堂」は、アルコール度数0.00%のノンアルコール飲料であり、これも市場が拡大しているカテゴリーだ。
日本での檸檬堂の成功を踏まえたのか、コカ・コーラグループは20年9月、アルコール入り炭酸飲料「ハードセルツァー」の世界展開を開始。南米を皮切りに米国、オーストラリア、欧州など既に20か国以上で販売されており、日本でも21年9月に関西で先行発売された。コロナ禍が長引いて自宅で飲酒する機会は世界的に増えており、こうした需要に対応した。
アルコール飲料にまで手を広げた「巨人」コカ・コーラにとって、日本は単なる一市場を超えた存在であるようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)