ここにも新型コロナの影響...なぜ「あの犯罪」は増加したのか?(鷲尾香一)

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   新型コロナウイルスの感染拡大が続いた2021年――。最新の犯罪統計資料を見ると、刑法犯罪が減少する一方で、DV(家庭内暴力)と児童虐待が増加するという特徴が見られた。

  • 統計によると、児童虐待が増加しているという…
    統計によると、児童虐待が増加しているという…
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刑法犯の認知件数は2002年をピークに減少

   警察庁は2月3日、「令和3年(2021年)の犯罪統計資料」を公表した。それによると、刑法犯認知件数は前年比7.5%減少し、56万8148件と前年に引き続き戦後最少を更新した。

   刑法犯の認知件数は、2002年の285.4万件をピークに減少を続けている。19年間で約230万件(80.1%)も減少している。直近5年間でも認知件数は2017年の91万5042件から34万6894件(37.9%)も減少している。

   ただ、重要犯罪の認知件数は2017年の1万888件と比較すると、2065件(18.9%)減少しているものの、2020年の8935件から2021年は8823件とわずか112件(1.2%)の減少にとどまった。

   まお、重要犯罪とは、殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐・人身売買および強制わいせつを指す。

   認知件数の減少では、総数に占める割合の大きい街頭犯罪および侵入犯罪が、一貫して減少してきていることが大きい。罪の種類では、総数に占める割合の大きい窃盗犯および器物損壊等が一貫して減少している。

   この点について、警察庁では、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う感染防止のための外出自粛も、この間の街頭犯罪の減少の一因となっているものと考えられる」とコメントしている。

増加傾向をたどった3つの犯罪とは

    一方で、全体の認知件数が減少している中にあって、一部の犯罪は、新型コロナの影響もあり、増加傾向をたどった。

   そのひとつが、特殊詐欺だ。特殊詐欺とは、「オレオレ詐欺」に代表される「還付金詐欺」や「架空料金請求詐欺」などの詐欺をいう。

   この特殊詐欺の認知件数が、2021年は1万4461件と前年比で911件(6.7%)増加し、4年ぶりに増加に転じた。ただし、被害額は278.1億円と前年比で7.1億円(2.4%)減少した=図表1参照

   認知件数増加の背景には、還付金詐欺が2020年の1804件から2021年には4001件へと121.8%も増加したことがある。これは、新型コロナの感染拡大で、給付金や支援金、補助金などが増加したことを受け、これを狙った詐欺が増加したものと類推される。

   それと、新型コロナの感染拡大の影響が現れたと見られるのが、DV(家庭内暴力)と児童虐待だ。

   配偶者からの暴力事案等は、大半を占める刑法犯・他の特別法犯による検挙件数が8633件と2020年から69件(0.8%)減少はしたものの、相談件数は8万3035件と2020年の8万2643件から392件(0.4%)増加しており、増加傾向に歯止めがかかっていない=図表2参照。

   また、児童虐待については、通告児童数が10万8050件と2020年の10万6991件から1059件(1.0%)増加した。過去10年間で見れば、2012年の1万6387件から6.5倍も増加している。

   児童虐待による検挙件数も2170件で、これは2020年の2133件から37件(1.7%)増加した。過去10年間で見れば、2012年の521件から約4.2倍に増加している=図表3参照。

   この配偶者による暴力(DV)や児童虐待の増加は、新型コロナの感染拡大により、在宅勤務、テレワークの増加が影響しているものと類推される。

   このように、新型コロナは外出自粛などの影響によって、犯罪件数の減少に結びついた半面、DVや児童虐待といった家庭等における犯罪の増加を引き起こした可能性がある。

   警察庁でも、「新型コロナウイルス感染症の感染防止のための『新しい生活様式』の定着等の社会情勢の変化は、今後も引き続き犯罪情勢に何らかの影響を及ぼすものと考えられる」とコメントしている。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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