思い切った「給与改革」への反響は?
アマゾンは「基本給の大幅増額」を伝える社内文書のなかで、「優秀な人材をひきつけて維持するために競争力を保つ必要性があり、大幅に報酬水準を引き上げることにした」と説明しています。
実は、これまでアマゾンは、「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業のなかで報酬が低いとされていました。今回の思い切った「給与改革」は、同社の人材戦略において功を奏すのかと思いきや、現地からは意外にも「冷めた声」が聞こえてきます。
たとえば、アマゾンを退社した元幹部の女性は、「給料よりもWLB(ワークライフバランス)に欠ける職場環境が引き金となって退社した」と伝えています。給料だけではなく、「リモートワークの導入」といった「柔軟な働き方」への遅れ、あまりにも負荷の大きい業務内容のために「多くの幹部がアマゾンを去った」としています。
さらに、人材マネジメント会社の幹部は、「優秀な人材が企業に求めるニーズが変化している」と指摘しています。働く場所を選べる「flexibility」(柔軟性)や、居心地の良い食堂や専用ジムといった「working environment」(職場環境)、そして、旅行券といった「perks」(特典)などがますます重要になってきており、「Money's important, but it's not everything」(お金は重要だけど、すべてではない)と分析していました。
くわえて、アマゾンの従業員が「talk is cheap!」(口で言うだけなら簡単だよ)と、今回の賃上げに懐疑的な見解であるとも報じられています。経営者への信頼も揺らいでいるように見受けられます。
それでは、「今週のニュースな英語」は、この「talk is cheap」を取り上げます。「言うのは安い」つまり、「言うだけなら簡単」「口ではなんとで言える」といった意味で、実効性を疑う時に使われる表現です。
Talk is cheap, but it does not change a situation
(言うだけなら簡単だ、何も状況は変わらないよ)
Talk is cheap, let's see what they do
(口では何とでも言えるよ、彼らの行動に注目しよう)
Talk is cheap, it's time to act
(言うのは簡単だ、行動する時だよ)
コロナ禍の巣ごもり需要で、急激に業績を伸ばしたアマゾン。大量に従業員を雇用する一方で、職場の待遇改善と賃上げを求めるストライキも頻発しています。時給数千円で働く労働者と「基本給4000万円」のエリート社員との格差が、問題となる日も遠くなさそうです。
(井津川倫子)