米国IT大手のアマゾンが、従業員の基本給上限を年35万ドル(約4000万円)に引き上げることがわかり、日本のメディアも大きく取り上げています。対象となるのは、米国の事務職や技術職で、これまでの2倍を超える超ド級の増額です。SNSで「4000万はマジやばい!」「ウソだろ?」といった驚きの声があふれる一方、現地からは「お金がすべてではない」「言うだけならタダ」といった冷めた声も聞こえてきます。果たして、アマゾンの人材戦略は吉と出るのか、それとも......。
「アマゾン平均年収4000万」は日本メディアのミスリード?
新型コロナウイルス禍からの急激な経済活動再開で、米国では人手不足が深刻化しています。とくにIT業界では、かねてから優秀なエンジニアの争奪戦が繰り広げられていたこともあり、今回の米アマゾンの「給与改革」は、採用競争力を高めるための「苦渋の決断」だと受け止められているようです。
それでも、この「4000万円」は、日本のビジネスパーソンにとって夢のような金額であることに間違いありません! 国内メディアも相次いでこのニュースを報じています。
Amazon、米で基本給上限4000万円に 人材確保へ倍増(日本経済新聞)
米アマゾン年収4000万円に増額 優秀人材確保のため(テレビ朝日)
米アマゾン、米従業員の初任給上限を2倍超に引き上げ(ロイター通信)
こうして見出しを比較してみると、ある違いに気がつきます。アマゾンが今回、4000万円に「大幅増額」するのは、「基本給上限」か「年収」か、それとも「初任給上限」なのでしょうか? 上記のほかにも「平均年収4000万円」と報じるメディアも複数ありました。
「初任給上限が4000万円」と「平均年収が4000万円」では、ずいぶんニュアンスが違ってきます。果して「正解」はどれなのか。海外メディアの報道を見てみると...。
Amazon raising base salary cap to $350,000 from $160,000
(アマゾンは、基本給の上限を16万ドルから35万ドルに引き上げた:米ブルームバーグ通信)
base salary:基本給
cap:上限
Amazon more than doubles its maximum base salary to $350,000 as it struggles to hire talent
(アマゾンは、優秀な人材を雇用するために、基本給を最大35万ドルに2倍以上引き上げた:Fortune)
海外メディアの報道を見る限りでは、今回アマゾンが引き上げるのは「基本給の上限」であって、「平均年収」ではないようです。
「初任給」も日本の感覚と少し違います。日本のように新卒で大量雇用する習慣がない欧米企業では、中途採用が盛んで「初任給」は人によってかなり差があります。そのため、「4000万円の初任給」は、すべての新入社員に支払われるわけではありません。
さらに、注目すべきは「cap」という単語です。「ものの上にキャップ(ふた)をかぶせる」という意味で、「価格や賃金などの上限」を表しています。「4000万円の基本給」は、職種や対象者を相当選んで適用されるのだろうと予想されます。
アマゾンは、どの職種が対象になるのか、詳細を明らかにしていません。ただ、少なくとも「平均年収が2倍以上に大幅アップ!」「すべての新入社員の初任給が4000万円!」といった、夢物語でないことは確かなようです。