いかにも大阪らしい発想? 「EXPO for SDGs」を掲げる大阪・関西万博のお膝元、大阪の経済界で「SDGs」(持続可能な開発目標)の実践がまだまだということがあってか、マンガで「SDGs」をアピールする動きが始まった。
中小企業を支援する独立行政法人・中小機構近畿本部が2022年1月19日、カラフルなマンガ形式の「まんが版 中小企業のSDGs はじめの一歩」を作り、ホームページ上に公開したのだ。
大阪府内で「SDGs」に取り組む中小企業は1割以下
「SDGs」がどれだけ大阪の中小企業の経営者に浸透しているか。大阪シティ信用金庫が2021年12月14日に発表した「中小企業における認知度と取り組みに関する調査」をみると、よくわかる。
大阪府内の中小企業1335社を調べた結果、「SDGsの内容を理解している」企業は76.1%とたしかに7割を超えたが、「すでに取り組んでいる」企業はわずか9.4%、「今後取り組み予定」と答えた企業も38.3%しかいなかった。まだまだ積極的とは言えない状況のようだ。
取り組まない理由のトップ3は「人手不足で余裕がない」(43.1%)、「費用対効果が不明だ」(39.4%)、「取り組み方がわからない(ノウハウ不足)」(36.7%)だった。
これはちょっと寂しい話だ。「SDGs」は大阪、いや関西の企業にとってはぜひとも取り組まなければならない重要課題のはずだからだ。なぜなら、3年後の2025年に開かれる大阪・関西万博のスローガンは「いのち輝く未来社会のデザイン」。150の国と25の国際機関をはじめ、企業やNGO、市民団体などが世界中から「いのち輝く未来社会」への取り組みを持ち寄り、「SDGs」の達成とその先の未来を描き出す、とアピールしているのだ。
「SDGs」をメインテーマとしているだけに、会場内でも「SDGs」を切り口にした展示のほか、たとえば、食品ロスの削減やマイバッグ利用の推進など、環境に配慮された運営が計画されている。パビリオンの出展者は、「貧困をなくす」「安全な水とトイレ」「ジェンダーの平等を実現」といった「SDGs」の17の目標から必ず1つは展示に盛り込む必要があるとされる。
立派な「SDGs活用ガイドブック」もつくったが...
そんななか、中小機構近畿本部がカラフルなマンガ形式の「まんが版 中小企業のSDGs はじめの一歩」を作り、ホームページ上に公開したわけだ。
物語は、イカス社長のところに納品の訪れた多幸(タコ)社長が、社員食堂でご馳走されるシーンから始まる。ヘルシーな料理が提供される食堂を見て、びっくりのタコ社長に、イカス社長は「健康経営ですねん」。社員がみなピカピカのバッジをつけているので聞くと、イカス社長は「これ...SDGsのバッジや。エス・ディ・ジーズいいますねん」。両者の口調が関西弁なのも、親しみを感じずにはいられない。
そして、初めて知ったSDGsという言葉に「気づき」を得たタコ社長、「SDGs、スケール大きすぎて、何から始めていいか、わかりませんねん」と、そこから試行錯誤を繰り返すストーリーが続くのだ。
実は、中小機構近畿本部は昨年(2021年)3月に、「中小企業のためのSDGs活用ガイドブック」(全56ページ)という冊子をすでにホームページ上に公開している。実際に大阪府内でSDGsに取り組む企業数社をルポするなど、本格的な解説ブックとなっていた。にもかかわらず、今回あらためてシンプルなマンガ版を出すねらいは何か。
基本のキから知るには、気楽に読めるマンガで
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部は、中小機構近畿本部連携支援部の豆谷篤(とうや・あつし)さんに話を聞いた。
――本格的なガイドブックがあるのに、あえてマンガ版をつくった目的はなんですか。
豆谷篤さん「大坂・関西万博では『SDGs』がメインテーマになっていますから、なんとか大きな波にならないだろうか、とくに中小企業の皆さんもこれを機会にぜひ取り組んでほしいと思い、(『中小企業のためのSDGs活用ガイドブック』の公開と同時期の)昨年3月から『SDGs』の相談窓口を作って頑張っています。すでに70件くらい、『どう始めたらいいのか』という相談をいただきました」
――ガイドブックは非常にしっかりした内容ですが、字がいっぱいという印象を受けますね。
豆谷さん「そのとおりです。それはそれで、本当に関心がある企業がやってみようという時には役立っていると思います。しかし、文字が多くて読むのに20分はかかります。関心をもつ前の段階で『基本のキから知りたい』『SDGsって何だ』と大雑把につかんでいただくには、数分で読めるマンガのほうがいいと思い(マンガ版の制作に至り)ました。
タコ社長も何も知らないところから始めましたからね。だから、この冊子のタイトルも『はじめの一歩』と名付けました。窓口に相談に来られた方には、ダウンロードを勧めています。まずはマンガを手に取っていただきたいと、切に願っています」
(福田和郎)