リーダー像は時代と共に変わる、だからこそ...
国政での活躍から都政をリードする立場に至る、石原、青島両氏の長年にわたる根強い人気は、戦時体験を共有した「昭和人」世代の人々に支えられていたとも言えます。
そして、我々昭和30年代生まれのアラ還世代は、その「昭和人」世代を親に持ち、彼らの考え方に大きな影響を受けながら育ってきた「昭和人ジュニア」世代です。「昭和人ジュニア」は成長過程の日常生活において、親世代の戦前、戦後の苦労話を聞かされることも多かったものです。そして、石原氏や青島氏の著作がベストセラーとなり、人気を集め彼らが選挙で大量得票を得て当選する姿を、何の違和感もなく受け入れられた世代でもあったと言えるでしょう。
「昭和人」石原、青島両氏の政治家としての終末もまた、同じ道筋でした。都知事退任後に国政選挙落選という、急速な求心力低下の現実を突きつけられ政界を引退。青島氏は引退後ほどない2006年に、持病の悪化により74歳で逝去しました。
さかのぼること約15年、いち早く「昭和人」世代リーダーの時代が終わりを告げた訃報であったかもしれません。石原氏は、青島氏の死後も都知事として活躍を続けていましたが、その昔ながらの「歯に衣を着せぬ」言動に対しては、以前にはなかった強い批判を受けるような場面も多くなり、新しい時代との齟齬(そご)や影響力の低下を感じさせられもしたものです。
昨今、若い人たちから理想の上司やリーダー像の話を聞くたびに、あるべきリーダーのスタイルというものは決して不変ではなく、時代の移り変わりと共に求められ、受け入れられるリーダーのタイプは変わりゆくものである、と思わされる場面が増えてきました。
今世の中は、岸田首相をはじめ、主に我々「昭和人ジュニア」世代が、多くの組織や場面でリーダー役を務めています。まだ「戦後」と言われた時代の中で、石原氏や青島氏をはじめ「昭和人」世代のリーダーたちを、当たり前のように手本としてきた世代です。
先人世代の最後尾で逝った石原慎太郎氏の訃報に接し、我々「昭和人ジュニア」世代も自己のリーダーシップが果たして、急速に変わりゆく今の時代に受け入れられているか否か。今一度自問してみる必要がありそうだと、強く思わされた次第です。
(大関暁夫)