ゼネコンを凌駕する大和ハウス工業の快進撃
「週刊東洋経済」(2022年2月12日号)の特集は、「ゼネコン四重苦」。採算が大幅に悪化する中で、ハウスメーカー首位の大和ハウス工業の快進撃が続く近況をまとめている。
大和ハウスは住宅だけではなく物流施設や商業施設などにも投資し、業容を急拡大している。傘下にゼネコンのフジタも抱え(13年完全子会社化)、ホテルなどの工事では、ゼネコンの競争相手にもなっている。
大成建設の20年度売上高は1兆4801億円だが、大和ハウスは4兆1267億円と軽く凌駕する。ゼネコンからすると、施主=「お客さん」という顔を持ちながら、いまや「敵」でもあるという焦点を当てながら、ゼネコン業界「冬の時代」をレポートしている。
EC拡大で物流施設が開発ラッシュだ。ここでも、大和ハウスが急成長している。千葉県流山市の常磐自動車道近くに大和ハウスの巨大物流施設「DPL流山Ⅳ」が昨年(2021年)11月、稼働した。東京ドーム7個分の面積だ。
顧客から「物流施設にテナントとして入りたい」という要望があれば、デベロッパーとして自社物件を開発し、その顧客に賃貸する。「自前の工場を増設したい」という希望があれば、ゼネコンとして工場建物の設計・施行を請け負う。1人の営業員が顧客企業の要望にすべて対応する体制を取っているのが強みだという。
大和ハウスの初期の成長を支えたのはプレハブ住宅だった。だが、いまは商業施設と物流施設をメインとする法人向け施設部門が全体売上高の44%、営業利益の64%を占めるほどになった。顧客ニーズを起点にする独自のセオリーがあるようだ。
ゼネコンに話を戻すと、小型工事にまで大手ゼネコンが進出し、中小ゼネコンは厳しくなっているという。受注競争を避けると、残っているのは「分譲マンション」だ。タワーマンションを除くと、一般のマンションを大手が手掛けることはほとんどない。
「手離れ」の悪さが、その理由だ。引き渡しが完了して終わりではない。アフターサービス、クレームへの対応があり、入金も遅い。
資材や人件費の高騰で、大手の業績も悪化している。受注した時点で赤字だったとされる大林組の案件について、詳しく取り上げている。北海道北広島市で23年3月の開業をめざして建設中の「北海道ボールパーク」は、北海道日本ハムファイターズの新スタジアムを核とするエリア開発だ。総工費約600億円の大型プロジェクトだが、採算は厳しいようだ。
これは特殊な構造と工事の遅れが原因で、施行が24時間態勢になっていることに関係者は驚いている。前期比7割減の大幅営業減益という大林組の22年3月期の通期業績計画の下方修正は、ゼネコン業界に衝撃をもたらしたという。