ビッグデータ時代の申し子「データサイエンティスト」はどんな仕事をしているのか?

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2030年には約54万人が不足

   一方で、データサイエンティストの現状はどうなのか。

   データサイエンティスト協会が2020年に実施したアンケート調査によると、現状では圧倒的に男性が多く、年齢層別では20代12%、30代30%、40代29%、50代20%、60代9%。業務に取り組んでいる期間としては、1年未満が11%、1~2年以上が25%、3~4年以上が22%、5年以上が43%と長期化する傾向にある。

   平均年収は791万円。年齢構成比がやや若者の割合が高いことを考慮すると、よい方だと見ている。社内育成だけでなく、新卒、中途ともにデータサイエンティストの確保に積極的になっているそうだ。

   その背景には、やはり人材不足がある。経済産業省がIT人材の需給状況を調査したデータから推計し、データサイエンティストが含まれる先端IT人材は12.2万人いるが、7.8万人不足している。2030年には54.5万人不足するとも予測しており、数年先には圧倒的な人材不足になりそうだ。

   最終章では、データサイエンスのビジネス活用の最新事例を紹介している。データを使った予測だけでなく、具体的な対処法までを示す「処方的アナリスト」の例として、「価格最適化」を挙げている。

   これは、需要に応じて、売上が最大となる価格を示すというものだ。実際、スポーツや演劇のチケット販売などの現場では、適用領域が広がっている。また、「AIによる発注の最適化」は、イトーヨーカ堂で導入している。

   データサイエンティストには、「社内に手本がない、上司の理解がない、スキルアップのための時間がない」などの問題があるものの、なにしろ「データは無限にある」。ために、データサイエンティストの将来は明るい、と結論づけている。

   必ずしも理系の人材に限定された職種ではないようだ。意欲ある営業パーソンにも一読を勧めたい。

(渡辺淳悦)

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