もし、ロシアがウクライナ侵攻したら...外国為替市場はどうなる?(志摩力男)

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

ウクライナ有事ならユーロ下落、そのとき円は......

   確率は低いとはいえ、もしロシアによるウクライナ大規模侵攻が起こったらどうなるのか?

   そのシミュレーションは絶対に必要だ。これまでの小規模紛争とは違い、ウクライナという巨大な国への直接的な侵攻は、マーケットを根底から揺るがす可能性がある。

   まず、ロシア・ルーブルのポジションを持っている方は少ないでしょうが、これは当然ダメ。米国はウクライナ侵攻でロシアを国際決済スイフトから締め出すと見られていますが、それがロシア及びロシアの銀行システムに及ぼす影響は甚大です。ルーブルは現状1ドル=77.25ルーブルぐらいですが、100ルーブル超えでしょう。

   主要通貨では、スイス・フランが急騰することになります。スイス・フランは通常、対ユーロでのレートでその強弱を測りますが、現状の1ユーロ=1.0380フランから1.00を突破し、0.95からそれ以下のレベルに下落(スイス・フランは上昇)するでしょう。

   スイスの中央銀行は、これまでも外国為替市場でスイス・フラン買いの介入を続けてきましたが、すでにその金額は100兆円を軽く超え、米国の気分を害しています。一気にスイス・フランへと避難する資金が殺到すれば、介入は意味をなさないでしょう。

   ユーロは、下落します。現状1ユーロ=1.1250ドル程度ですが、1.10ドル割れから、1.05ドル方向となります。直接ロシアと闘うわけではないですが、準紛争当事国のようなものです。ロシアからドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン(ノルド・ストリーム)が止まるかどうかわかりませんが、ウクライナを経由するノルド・ストリームはその流量が減り、欧州の電力事情は危機的になります。天然ガスの価格は当然、急騰します。

   円はどうなるか――。そこは少し難しい。開戦初期は「リスクオフの円高」が復活するでしょう。特にユーロ円が売られることになるでしょう。紛争から距離的に離れていることも円買い要因となるかもしれません。現状、128.50円前後のユーロ円は、120円割れに向けて急落するでしょう。

   ユーロ円が急落するので、ドル円にも下げ圧力がかかると思われます。1ドル=110円方向でしょうか。

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
公式サイトはこちら
姉妹サイト