東証再編、プライム移行に「経過措置」使う企業相次ぐ 顔ぶれもほぼ変わらず...これで市場活性できるのか?

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経過措置に該当する会社は?

   やはり市場の関心は、プライムの基準を満たさない東証1部の約600社の対応だった。最終的には、ほぼ半々に分かれ、296社が適合に向けた計画書を提出して、プライム上場を選択。321社はスタンダードに移る道を選んだ。

   計画書提出による経過措置の期限は決められていない。このため、5年以上を要する計画の会社が20社もあり、最長10年の計画もある。

   どのような会社が経過措置に該当するのか。

   これについては、時価総額が大きくても、流通株式比率が引っかかる企業が多い。たとえば、ゆうちょ銀行は日本郵政が約89%の株を持つが、日本郵政が中期経営計画で保有割合を5割以下にする方針を示しており、プライムを選んだ。ヤフーを傘下に持つZホールディングスも流通株式比率がクリアできず、計画書を提出した。

   このほか、早稲田アカデミー、WOWOW、三陽商会、中村屋、東映、コナカなども経過措置を利用してプライムを選択した企業だ。

   計画書を提出せず、スタンダードを選択した企業には、たとえば新生銀行がある。SBIホールディングスの株式の公開買い付け(TOB)にともない、流通株式比率の基準を満たしていなかったからだ。

   逆に、プライムの基準を満たしながらスタンダードを選択した企業も23社あった。エバラ食品工業や大正製薬ホールディングスなどだ。いずれも、基本的に国内での事業が中心で、国際的にアピールするする必要性が低いと判断したとみられる。

   そもそも、東証の上場基準、廃止基準が緩いために時価総額の小さい企業まで1部に名を連ねるようになり、その結果、市場全体が投資対象として魅力が薄れるという危機感から市場再編が決められた。

   一方、大企業の代名詞ともいえる「1部上場」は、人材採用や取引上のステータスとして、とくに規模の小さい企業ほど大きな意味がある。これを厳格な基準でいきなり絞り込むことに反発が強く、新市場は従来と大差がない形で始動することになった。

   こうした状況に新聞の評価も辛目。この間の紙面には「東証市場改革、看板倒れも」(各社の申請が出そろった2021年12月29日、日本経済新聞朝刊)、「絞り込み『骨抜き』」(22年1月22日、読売新聞朝刊)、「東証プライム、骨抜き懸念」(同日、産経新聞)などの見出しが躍った。

   そうした記事でも指摘しているように、東証を傘下に持つ日本取引所グループの上場株式の時価総額は6.5兆ドル(約740兆円)で、米ニュ-ヨーク証券取引所の28.4兆ドル、ナスダックの24.3兆ドルに遠く及ばず、中国・上海証券取引所(8兆ドル)やユーロネクスト(7.7兆ドル)にも抜かれて世界5位に甘んじている。

   こうした劣勢を挽回し、日本の株式市場の国際的な地位を高める第1歩になるはずの市場再編だが、「現状ではかけ声倒れに終わる懸念が強い」(1月12日、日経新聞社説)といえそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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