ガソリン価格高騰抑制への決め手「トリガー条項」おさらい 政府が「凍結解除」に難色示す理由とは

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

諸外国と比べ異常に多くて高い石油の税

   トリガー条項とは何か、ここでおさらいをしておこう。「トリガー」(trigger)とは引き金を引く、起動させるという意味を持つ。ガソリンにかかっている高い税金の一部を免除することだ。租税特別措置法第89条にもとづき、「レギュラーガソリン1リットルあたりの価格が3か月連続して160円を超えた場合、ガソリン税の上乗せ分(旧暫定税率)25.1円の課税を停止する」。つまり、約25円の税金分が安くなるというものだ。

   日本の石油製品にかかる税金は、諸外国と比べても異常に多くて高い。石油連盟の「今日の石油産業2020」には、原油が入ってきてから消費者にわたるまでの、各段階における課税のリストが載っている。それを見ると、ガソリンの場合、まず工場で精製される前に「関税」と「石油石炭税」(地球温暖化対策のための税)がかかる。

   そして、工場の精製過程で「ガソリン税」が加わる。1リットル当たり53.8円で、そのうち25.1円が「暫定税率分」と呼ばれる、道路財源不足を理由に上乗せされた臨時の税金だ。「暫定だ」「臨時だ」と言いながら1974年以来、50年近く徴収され続けており、批判の的になっている。この暫定税率分の約25円を免除するのが「トリガー条項」だ。

   さらに、工場から出荷後、ガソリンスタンドに行く際に「消費税」も課せられる。結局、1リットルあたりガソリン代の半分近くを税金が占め、とくに消費税に関しては石油精製・元売り会社の団体である石油連盟も「二重課税」(Tax on Tax)と批判している。

   しかし、政府は「ガソリン税は製造コストにかかる税で、消費税は利用者が買う時にかかる税だから二重課税ではない」と突っぱねている。もっとも、製造コストの税金分もガソリン価格に転嫁され、利用者が支払うことに変わりはない。

東日本大震災によって解除が凍結されていた「トリガー条項」
東日本大震災によって解除が凍結されていた「トリガー条項」

   トリガー条項は、ガソリンにかかる税金が高すぎるという批判を受け、旧民主党政権下の2010年4月に成立したが、翌年3月に東日本大震災が起こったため、復興財源を確保する名目で運用が凍結されたままだ。しかし、「復興五輪」を掲げた東京五輪が終わった現在、「もう復興財源の確保」は理由にならないと、発動を求める声が野党やインターネット上でも高まっていた。

   第一生命経済研究所の首席エコノミスト熊野英生氏は、「脱炭素化」を目指す岸田政権が、石油元売りへの補助金支給を含め「『なぜ、化石燃料(である石油へ)の援助を行うのか?』」という疑問を持つ人も多いはず」と投げかけていた。

   熊野氏のレポート「ガソリン補助の効果と限界~家計への恩恵は少ない~」(1月28日付)のなかで、「化石燃料を割安にすると、CO2排出量が増える」と懸念し、こう訴えている。

「必需品の支援ならば、食品や医薬品の価格支援のほうを優先する考え方もできる」「家計の負担増が問題ならば、輸入物価の上昇が円安によって進んでいることも考慮する必要がある」「筆者の解釈は、円安の痛みがあっても、為替レートを人為的に動かすことは適切ではないので、代わりに賃上げを促進することで、家計が物価上昇に対して耐久力を持つしかないというものだ」

   そして、ガソリン減税よりも、「官民が一致して賃上げに力を注ぐことこそがインフレ対策としての正当性と効果がある」と強調するのだった。

(福田和郎)

姉妹サイト