東京都新宿区で本格的な自動運転タクシーの実証実験が2022年1月22日、始まった。今回の実証実験は何が本格的なのか――。
今回の実証実験は大成建設、損害保険ジャパン、KDDI、日本信号などゼネコンや損保、通信会社が、自動運転システムを開発するベンチャー「ティアフォー」と組み、2月4日まで実施する。
自動運転は「レベル4」相当で、東京・新宿のように混雑した都心でも安全に走れることを実証するのだという。
新宿駅西口と東京都庁を結ぶコースを走る
今回の実証実験は、東京都が「5Gを活用した西新宿エリアの自動運転移動サービス」の実現を目指し、公募したプロジェクトに採択された。
トヨタ自動車のタクシー用ワゴン車「ジャパンタクシー」をベースに開発した自動運転の車両が、新宿駅の西口地下ロータリーから東京都庁第二本庁舎に向かい、ここから新宿駅西口中央通りを通って新宿駅西口に戻る。走行距離は約2キロメートルとなる。
実証実験にKDDIが入っているのは、最新の第5世代の通信規格である5Gを活用するためだ。大成建設や日本信号は「インフラ側からの走行支援技術」を導入していることから実験に参画した。
具体的には道路や信号に設置した特殊なセンサーを用いて、西口ロータリーからの発進を支援する。さらに西口から都庁に向かうトンネル内の壁に特殊な塗料を塗ることで、識別が難しいトンネル内でクルマの位置を正確に把握できるようにする。
これらインフラ側からの支援を新たに加えることで、自動運転の精度を高めるのだという。
自動運転システムを開発したティアフォーは、日本国内ではトップレベルの技術を持つベンチャーで、損保ジャパンが出資している。
ティアフォーと損保ジャパン、KDDIなどは2020年11月にも西新宿でジャパンタクシーと5Gを使った自動運転タクシーの実証実験を行っている。この時の実証実験の結果、自動運転の精度を高めるには、道路や信号のセンサーなどインフラ側からの支援が必要と判明。今回、大成建設や日本信号などが参画することになった。
都心でも自動運転が成り立つこと実証目指す
前回は自動運転システムを監視し、万一の緊急時に対応するセーフティドライバーが乗車せず、「無人のタクシーによる自動運転の実証実験は国内で初めて」と報道された。今回もタクシーは自動運転となるが、前回の無人とは異なり、セーフティドライバーが乗車する予定だ。一般客の試乗も、今回はオミクロン株の感染拡大によって中止となった。
自動運転タクシーは、米国のグーグルから分社したウェイモが世界初の自動運転タクシーのサービスをアリゾナ州の一部で始めるなど、米国が先行している。中国も北京市内で自動運転タクシーの実証実験を行っている。米国ではセーフティドライバーが乗車しない無人タクシーも走っているようだが、北京市内では同乗しているという。
日本の自動運転タクシーは米中の後塵を拝しているが、今回の実証実験はインフラ側からの走行支援で、混雑した東京都心でも自動運転が成り立つことを実証することに意義があるのだという。
ただし、今回は一般の人の乗車がないこともあり、大手メディアで報じたのは朝日新聞くらいと、注目度は低いが、技術は日進月歩。2月4日まで自動運転タクシーがトラブルなしに西新宿を走り切ることができるか注目したい。(ジャーナリスト 岩城諒)