どんどん感染拡大するオミクロン株が怖い、というわけだろうか。
地震、感染症、テロ、サーバー攻撃などの緊急時でも企業活動が存続できるようにする「事業継続計画」(BCP)をにわかに策定する会社が増えている。
東日本大震災以来、政府が音頭をとっても「笛吹けど踊らず」だった産業界だったが、危機意識は高まっている?
都民の1割が濃厚接触者では企業活動がマヒ
「BCP」とは「事業継続計画」(Business Continuity Plan)の頭文字を取った言葉だ。企業が、テロや災害、システム障害といった危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意し、生き延びることができるようにしておくための戦略を記述した計画書だ=図表1参照。
大規模な地震などが発生したときには、オフィスやデータセンター、従業員などの重要な経営資源が被災し、活動能力が限定されかねない。すべての業務を平常時と同じ水準で継続させることは困難になる。そのため、限られた経営資源を効果的に投入するには、とくに本社機能の維持と、最低限「守るべき業務」と「守るべき水準」を事前に定めておくことが重要となる=図表2参照。
日本では2011年に東日本大震災以降、そうした緊急時における従業員の配置や投入場所を定めたマニュアル――BCPの策定を、政府が推奨してきた背景がある。しかし、BCPを策定している企業は昨年(2021年)5月の段階でまだ全体の17.6%にとどまっていた(帝国データバンク調べ)。
ところが、オミクロン株の感染急拡大によって、BCPの策定を急ぐ企業が増えているという。報道によれば、1月中旬、トヨタ自動車やダイハツ工業の工場では従業員の感染が確認されたため、操業停止などに追い込まれた。
感染者だけでなく、濃厚接触者とされた従業員が出社できない事態も深刻になっている。このため、政府や東京都など各自治体があらためてBCPの策定を企業に呼び掛けている。しかし、日本経済団体連合会(経団連)の十倉雅和会長は、1月24日の定例会見で、政府の新型コロナ対策について触れ、「BCPを言うなら、濃厚接触者が早期職場復帰しやすくしてほしい」として、こう訴えたのだった。
「(濃厚接触者の)隔離期間を短縮してほしい。世界は5日の隔離帰還で済んでいるのに、なぜ日本は10日なのか」「ある人が2月初旬には東京都全体で濃厚接触者が150万人になると試算していたが、全員を隔離していたら平均で(都民の)10%以上の人が隔離されることになる」「ビジネスのBCPは国内だけで成り立っているわけではない」