安倍内閣ブレーンだった京大教授、岸田首相の「所得倍増」支持するワケ

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日本経済回復へ、最優先は「プライマリーバランス規律の撤廃」

   そもそも小泉政権が「プライマリーバランス黒字化目標」を含む「骨太の方針」を閣議決定したことが、日本経済の動向に悪影響を与えていた。

   プライマリーバランスとは、「基礎的財政収支」のことで、アメリカをはじめ世界中のどこの国でも政府の支出は基本的に赤字だ。しかし、財務省は政府を家庭になぞらえて、「これ以上赤字が増えると国が滅びる」と脅しているのだという。

   藤井さんは「政府は国債を発行しておカネをつくることができる。だから、政府が借金で破綻することなどあり得ない」と説明している。第1章を、この理屈を説明するために、まるまる充てている。簡単に言えば、「政府の赤字=国民の黒字」ということだ。

   政府が赤字国債を発行すること――すなわち「政府の赤字」は、「民間市場への外部からの資金注入量」そのものになる。これは、経済学の現代貨幣理論、通称MMT(Moderen Monetary Theory)が前提としている「事実」である。

   ちなみに、MMTは「トンデモ理論」という批判に対して、ケインズ経済学を継承発展させた正統なものである、と藤井さんは反論している。氏は社会工学者だが、学位論文は計量経済学で、その後カーネマン、セイラーといったノーベル賞受賞経済学者の研究グループと仕事をし、「土木の政策論を専門とする経済学者」と自任している。

   最後に、コロナ禍のいま、日本経済を回復させて成長軌道に乗せる、4つの具体策を挙げている。

1 プライマリーバランス規律の撤廃
2 コロナ終息までの消費税凍結
3 企業に対する粗利補償
4 危機管理投資

   なかでも、1つ目のプライマリーバランスの撤廃は最優先だという。これがある限り、粗利の補償も十分な給付金を出すこともコロナ病床も増やすこともない、と書いている。消費税の減税はコロナ後に多くの国が実施している。

   緊縮財政と構造改革という歴代政府が踏襲してきた新自由主義的な政策を大転換し、積極財政に転じれば、コロナショックは日本が再生するチャンスになる、と結んでいる。そのためには、しっかりと岸田政権の政策と実行力を見極めよう、と呼び掛けている。

(渡辺淳悦)

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