多すぎる薬剤師と薬局問題の着地点とは
次に、「週刊ダイヤモンド」(2022年1月29日号)の特集は、「薬剤師31万人 薬局6万店 大淘汰」というおどろおどろしいタイトルがついている。いま、何が起きているのか。
厚生労働省は昨年夏、こんな警鐘を鳴らした――薬剤師は2045年には最大12.6万人過剰になる、と。
そして、増えすぎた薬局を減らす施策も打ち出している。実際、乱立する門前薬局を狙い撃ちした調剤報酬の大幅減額が行われた。2020年度の診療報酬改定で、一般的な薬局の調剤技術料は42点(1点=10円)。
これが、月に4000枚以上の処方箋を受け付け、集中率が75%を超える薬局などの場合は、26点に減らされる。大手チェーンを念頭に、さらに厳しい減額も実施。
「病院の門前で薬をただ出すだけの薬局は評価しないという姿勢が鮮明になった」
しかも昨年11月には、コロナ経口薬を供給する薬局をリストアップし、選別を進めた。現在6万店ある薬局だが、淘汰が進みそうだ、と見ている。
これに関連して、都道府県別の薬剤師の平均年収ランキングを公開している。トップは山口県の780万円。2位は福島県の737.4万円で、3位は宮城県の677.9万円。最下位は沖縄県の461.4万円。300万円以上の差がある。これには理由があって、マリンスポーツを楽しみたいなど、沖縄を希望する薬剤師が多く、給与水準が低くても、人が集まりやすいからだという。
ほかの九州各県も下位が目立っていた。薬学部のある大学が九州には多く、若手薬剤師が供給されやすい、という地域ならではの事情のようだ。同様に、薬学部が多い東京都もランキング44位。慢性的に薬剤師が供給過剰で、年収相場が下がっている。
薬剤師が増えた一員は、薬学部が乱立したからだ。
薬学部6年制が始まる前の2002年度の薬学部の定員は8200人だったが、2020年度は1万1602人と、約1.4倍にまで増加した。あわせて、全国55私立大学薬学部の「淘汰危険度」ランキングを掲載している。
ワースト1位は、姫路獨協大学。国家試験合格率は35.6%。2位は千葉科学大学だ。加計学園が設置者で、19年4月から4年制の薬学部生命薬科学科の募集を停止し、6年制の薬学科の存続が危ぶまれる。
成り手が増えれば、収入が下がるのは当たり前だ。だが、この20年間は異様なスピードで、薬剤師が増えたことがわかる。こうしたことが受験生にも伝わると、ますます志願者が減ると思われるが、どうだろう。
高額な学費を6年間払っても、割に合わないという声がある。そこで、奨学金を肩代わりする手法で人を集めているドラッグストアを紹介している。就職先によって、収入に差があるのも薬剤師の特徴だ。業界に関心がある人に一読を勧めたい。