米金融当局の景気下支えが期待できない
FRBを中心とした米金融当局の景気下支えが期待できないという点では、大和総研ニューヨークリサーチセンター研究員(NY駐在)の矢作大祐氏のレポート「米国経済見通し オミクロン株で急減速 悪影響は短期間で収束見込みも、財政・金融政策のサポートは少ない」(1月20日付)の中でも、厳しい見方を示している。
オミクロン株の影響については、
「オミクロン株による感染拡大は急激である一方で、収束も早い可能性があり、経済への悪影響も短期間で収まると見込まれる」
としながらも、問題は米の財政・金融当局の経済への景気支援策だという。インフレ対策のほうを重視しているというわけだ。
「感染収束後の回復ペースは、財政・金融政策による下支えが見込みにくいことから、従来と比べて力強さに欠ける恐れがある。財政政策に関しては、成長戦略の実現可能性が低下しつつある」「実質賃金の低下に加え(中略)低・中所得層の暮らし向きは悪化し、個人消費の回復ペースの再加速を抑制し得る」「FRBはインフレ加速への対応として金融政策の正常化(上半期は利上げ開始、下半期はバランスシートの縮小開始)を進め、金融環境は今後タイト化する見込みである」
矢作氏がとりわけ問題視するのは、バランスシートの縮小だ。FRBはバランスシートの縮小のために、資産を全面的に売却する可能性が高い。
「バランスシート縮小検討の過程は実質金利が上昇する傾向にあり、企業や家計の借入意欲の低下、ひいては投資・消費の抑制要因になり得ると考えられる」
加熱したインフレを冷やすために、景気が後退するのではないかと懸念するのだ。