いいことづくしの在宅勤務だが、意外な問題点
次に、「マインドフルネス」という概念を検討している。マインドフルネスは、とくにここ数年でよく聞くようになったが、ようは「今、この瞬間」に集中すること。さらに、同書で友原さんは、マインドフルネスを「価値判断をしない」ことと定義している。
悩みや苦しみは、よい・悪い、正しい・間違いという価値判断に起因する。そのため、人はこうあるべきと思っていても、そうではない自分をふがいなく感じて、自分を責めてしまう。
マインドフルネス状態になるためには、瞑想や座禅などが使われることが多い。グーグルなどの有名企業が研修にも採用しているそうだ。
ワシントン大学教授のデービッド・レビーらの実験によると、マインドフルネス瞑想を通じた訓練によって、集中力や記憶力が増して、マルチタスクによる問題を改善する可能性がある、と指摘している。
メールやチャット、ビデオ会議のようなツールを同時に使いこなしながら仕事を行うマルチタスクが当たり前の現代において、役に立つかもしれない。
ちなみに、上司がマインドフルであれば、部下の疲弊度は低く、業務評価は高いそうである。
第4章では、テレワーク時代の幸福な働き方について論じている。
スタンフォード大学教授のニコラス・ブルームらが行った研究によると、在宅勤務で従業員のパフォーマンスはアップし、業績も向上したという。対象は中国の旅行会社のコールセンターの従業員。オフィス勤務の従業員に比べて、応答電話数は13%多かった。また、離職率も大幅に低下した。企業全体の生産性は20~30%改善した。
いいことづくしに見える在宅勤務だが、問題点もあった。在宅勤務者の方が、昇進率は低かったのだ。顔の見えない従業員は過小評価される危惧がある、と指摘している。
ただし、この研究はコールセンターという自己完結した業種が対象だった。それ以外の業種や職種でどうなるか、今後研究が進みそうだという。